TOKAI Research Memo(6):「中期経営計画2025」の利益やROEは当初目標を達成する見込み
*13:06JST TOKAI Research Memo(6):「中期経営計画2025」の利益やROEは当初目標を達成する見込み
■今後の見通し
2. 中期経営計画の進捗状況
TOKAIホールディングス<3167>は、「中期経営計画2025」(2024年3月期~2026年3月期)の重点施策として、「事業収益力の成長(収益基盤の拡大+新サービスの展開)」「脱炭素化社会の実現に向けた持続的成長基盤の強化」「成長の源泉となる人財の育成と組織の活力の最大化」の3点に取り組み、経営数値目標として2026年3月期に売上高2,600億円、営業利益175億円、親会社株主に帰属する当期純利益100億円、継続取引顧客件数357万件を掲げた。
これまでの業績の進捗状況を見ると、売上高はコンシューマー向け情報通信事業における顧客件数の下振れを主因として、当初目標に対して若干下回るペースとなっているが、営業利益はエネルギー事業が想定以上に増加したことにより目標を上回るペースとなっている。最終年度となる2026年3月期の業績計画は、当初目標に対して売上高で70億円引き下げたものの、各利益やROE、ROICについては当初目標値を達成する公算が大きい。
2027年3月期からスタートする次期中期経営計画は現在策定中だが、基本的な事業戦略については継続し、ROEやROIC、並びに株主還元も意識した経営を推進していくものと予想される。また、同社は長期ビジョンとして2031年3月期に売上高4,000億円、営業利益300億円、継続取引顧客件数500万件を目標に掲げていることから、2027年3月期以降はM&A戦略も一段と強化していくと見られる。
資本収益性と成長性の2軸で事業ポートフォリオの全体最適化に取り組む
3. 企業価値向上に向けた取り組み
同社は企業価値の向上に向けて、1) 事業ポートフォリオ経営、2) 各事業の拡大・効率化の推進、3) ESG経営、の3点に取り組んでいる。
(1) 事業ポートフォリオ経営への取り組み
事業ポートフォリオ経営として、資本収益性と成長性の2軸でグループ全体最適を実現するポートフォリオの構築に取り組んでいる。具体的には、事業ポートフォリオを成長領域(エネルギー、法人向け情報通信、建築設備不動産)、期待領域(再エネ他GX関連、海外、地域連携)、成熟領域(個人向け情報通信、CATV、アクア)、改革領域(事業収益改善または撤退/売却を検討する事業)の4セグメントに分類し、ポートフォリオ上の位置付けに応じて各事業の拡大並びに効率化を推進し、ROICとROEの向上を目指す。期待領域についてはグループの持続的成長につながる新規事業の取り組みなども含まれる。
また、事業間や会社間の連携をさらに強化することで、グループシナジーの最大化にも取り組んでいく。コンシューマー向けを対象としたLPガスや情報通信、CATV、アクア事業などは、複数のサービスを利用する顧客に対して割安なセット料金プランの提供や、ポイント付与率を高めるなどしてクロスセルを推進し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指す。
(2) 各事業の拡大・効率化の推進
a) 成長領域
エネルギー事業では、M&Aやサービスエリアの拡大により顧客基盤を拡大し、持続的な成長を図っていく。また、収益性を維持向上すべくDX戦略による業務効率化、生産性向上にも取り組んでいく。具体的には、自動検針メーターの導入を進めており、2026年3月末までに100%達成を目指す(設置率は2024年3月末時点の70%から2025年9月末は99%に上昇)。検針業務のコスト削減だけでなく、リアルタイムに顧客の消費量を把握することで、最適なタイミングでの配送が可能となり物流の効率化が進んでいる。2027年3月期以降は検針員(現在400人程度)の削減による固定費削減にも取り組む方針だ。
法人向け情報通信事業では、通信インフラ投資やデータセンターの能力増強等による事業規模の拡大に加えて、旺盛なDX需要に対応すべくM&A戦略によりデジタル人財の強化を進めている。また、建築設備不動産事業では建築不動産、土木工事、設備工事などグループ各社が持つリソースを共有することで大型案件を受注し、総合建築不動産グループとして東海エリア内でのシェア拡大を目指す。
b) 期待領域
再エネ他GX関連事業においては、太陽光発電(PPA含む)や蓄電池システムの普及促進に取り組んでいるほか、創エネ事業を手掛ける企業への出資も行いながら、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指している。出資実績として、2023年にTOKAIがフィリピンの水力発電事業会社であるREPOWER ENERGY DEVELOPMENT CORPORATIONの株式を取得し、2024年2月に持分法適用関連会社化(出資比率20%)した。また、2023年12月に発電用の浮体式垂直軸型洋上風車※の開発に取り組むベンチャー企業である(株)アルバトロス・テクノロジーに出資した。アルバトロス・テクノロジーへの出資は、グループとしてGX領域における情報取集・知見の集積を目的としたものとなる。
※ 浮体式垂直軸型洋上風車は、海に浮かべる浮体部分の小型化が実現できるほか風車の製造方法の工夫によって、従来型(水平軸型)の風車と比べ製造コストや運用コストの低減が期待されている技術。既に様々な企業・団体との共同研究が開始されている。
海外事業については、エネルギー事業においてベトナムでLPガス関連企業を、フィリピンで水力発電会社を持分法適用関連会社としているほか、情報通信事業においてインドネシアや台湾を中心にAWS導入支援等の事業を展開している。海外事業に関しては短期的な業績への影響は軽微であり、中長期的な収益貢献を期待しての展開となる。
c) 地域連携
地域連携の取り組みについては各グループ会社において地域密着サービスや官民連携による取り組みを推進している。具体的な取り組みとして、ケーブルテレビ子会社でフィットネスジムを運営しているほか、子会社の東海ガスが静岡県内で2ヶ所のキャンプ場を運営している。
(3) ESG経営への取り組み
a) 環境(Environment)
2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みとして、顧客のエネルギー利用並びに自らの事業活動におけるGXを推進する。顧客向けについては、省エネガス機器の普及促進やカーボンオフセットガスの販売、再生可能エネルギーの導入促進、地域と一体となった低・脱炭素化の推進、原料の脱炭素化などに取り組んでいる。また、自らの事業活動においてはDX推進によるLPガス事業の配送効率化や自動検針化、太陽光発電システムの設置や事業所で使用する電気の再エネルギー化を推進している。
b) 社会(Society)
人的資本の強化施策として、人財・組織の活力最大化、従業員のウェルビーイング向上に取り組んでいる。「理想の個」の実現に向けて、自律キャリア支援制度やリスキリング支援制度などを整備したほか、「理想の組織」の実現に向けて、多様な働き方の実現、働きがいを高める人事制度の改定、トップレベルの健康経営の実践、管理職への心理的安全性研修、コーチング研修などに取り組んでいる。
c) ガバナンス(Governance)
コンプライアンス・ガバナンスの強化を図るべく、役員・管理職の研修の徹底や組織のさらなるコンプライアンス意識の向上に向けた取り組みを推進している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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