「国際通貨」期待の後退【フィスコ・コラム】
*09:00JST 「国際通貨」期待の後退【フィスコ・コラム】
欧州で反政府抗議活動が拡大し、政情不安が高まっています。財政不安を抱えるフランスでは暴動が激化し、ユーロ売りを誘発。ドル離れが意識されるなか、欧州の長年の構造問題が改めて浮上し、ドルに代わる国際通貨としてのユーロへの期待にも影を落としています。
抗議の背景にあるのは、物価高と暮らしへの不満です。ポルトガルでは前週末に数万人が首都リスボンでデモ行進しました。住宅価格はここ10年間で2倍以上となり、賃金が家賃や食料品の値上がりに追いつきません。ベルギーでも財政支出の削減に反発する人々が警官隊と衝突。移民問題だけで説明できない、家計と公共サービスを巡る対立が広がっています。
特に深刻なのがフランス。教育環境の悪化や生活費高騰への抗議が各地に拡大し、放火や略奪が発生しました。政府は治安回復を急ぐものの、背景には歳出削減への根強い抵抗があります。国民の要求に応じて支援を増やせば財政赤字が膨らみ、引き締めを続ければ反発を招くという板挟みに。金融市場は敏感に反応しています。フランス国債が売られ、10年債利回りは5%を突破しました。
信用力の高いドイツ国債との金利差も拡大。財政再建への信頼が揺らぐほど、投資家はフランスに高い金利を求めます。銀行株も下落し、ユーロには売り圧力がかかりました。国債価格の下落は保有する金融機関の資産価値を損ない、融資姿勢を慎重にさせる要因にもなります。混乱がイタリアなどに及べば、欧州全体の資金調達環境にも響きます。
こうした展開は、ユーロの制度的な弱点を浮き彫りにしています。通貨と金融政策は共通でも、税制や予算は各国が決めます。財政の立て直しを急ぐ国と、生活支援を優先する国では利害が異なり、対応が遅れがちです。さらに米国債のように巨額の資金を一括して受け入れる、統一された安全資産の市場も十分に育っていません。ただし、欧州中銀(ECB)によれば、ユーロの国際的な利用比率は約2割で、ドルに次ぐ地位を保っています。
ユーロの信認が消えたわけではありませんが、ドルへの依存を減らしたい投資家にとって、欧州の政治的な分断は見過ごせない障害です。今後は暴動の規模以上に、フランスの予算審議と独仏国債の金利差が焦点となります。過去の欧州債務危機でも、財政不安と緊縮策への反発が重なり、通貨への信頼が傷つきました。今回はユーロ圏の中核国フランスが揺れているだけに、影響を軽視できません。
(吉池 威)
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