飯野海運 Research Memo(5):不動産業は東京都心部の一等地でオフィスビルを賃貸、海外展開も本格化
*14:45JST 飯野海運 Research Memo(5):不動産業は東京都心部の一等地でオフィスビルを賃貸、海外展開も本格化
■飯野海運<9119>の事業概要
4. 不動産業
不動産業はオフィスビル賃貸・管理・メンテナンスを行っている。本社ビルである飯野ビルディング(イイノホール&カンファレンスセンター含む)など、東京都心部の一等地に賃貸オフィスビルを複数所有していることが特徴だ。またフォトスタジオ事業(イイノ・広尾スタジオ、イイノ・南青山スタジオ)など関連事業も展開している。
国内では1983年竣工の東京富士見ビル(東京都千代田区)、1988年竣工の飯野竹早ビル(東京都文京区)、2006年竣工の汐留芝離宮ビルディング(東京都港区)のほか、2009年に飯野ビルディング(東京都千代田区)の建て替え工事に着手し、2011年10月に飯野ビルディング1期工事が完了して開業、2014年11月に飯野ビルディング2期工事が完了してグランドオープンした。2017年12月にはNS虎ノ門ビル(東京都港区、2016年竣工)の一部持分を取得した。なお事業ポートフォリオ見直しに伴い、2017年3月に笹塚センタービル(1995年竣工)を売却した。また、東京桜田ビルを解体して参画した新橋田村町地区市街地再開発事業で、日比谷フォートタワー(東京都港区)が2021年6月に竣工した。
また不動産業のポートフォリオ拡大に向けて海外展開も本格化させている。第一弾として2020年3月に英国ロンドンのオフィスビルBRACTON HOUSEを取得した。2022年12月には住友林業<1911>及び熊谷組<1861>とともに、米国テキサス州ダラス近郊における木造7階建てESG配慮型オフィスの開発(2024年4月竣工)に参画した。米大手デベロッパーCrow Holdingsと特別目的会社(SPC)を設立し、マスティンバー建築の大規模木造オフィスを建設するプロジェクトである。2024年3月にはルクセンブルクのStrand 111 S.à r.l.社(目的会社)の株式を取得し、英国ロンドンで2棟目となるオフィスビル111 STRAND(2002年竣工)を取得した。
この結果、2024年5月末時点の所有賃貸ビルは国内6棟(飯野ビルディング、汐留芝離宮ビルディング、日比谷フォートタワー、東京富士見ビル、飯野竹早ビル、NS虎ノ門ビル)、及び海外3棟(英国ロンドンBRACTON HOUSE、英国ロンドン111 STRAND、米国ダラスSOUTHSTONE YARDS OFFICE-Bの合計9棟となっている。2022年10月には(株)竹中工務店などとともに、米国オレゴン州ポートランド市における再開発事業「Press Block プロジェクト」(2025年10月竣工予定)に参画した。賃貸住宅棟と商業・オフィス棟からなるエリア最大規模の複合再開発事業である。同社にとって不動産業は長期的な視野における安定収益源の柱の1つであり、今後は海外不動産への投資や国内では築古ビルのリノベーションにも取り組み、収益拡大を目指す方針である。
5. 飯野ビルディング
飯野ビルディング(2011年開業、2014年グランドオープン)は「100年先にも愛されるビル」をコンセプトとして、通常の外壁・窓ガラスを二重構造にして断熱空気層を作ることで熱負荷を軽減する「ダブルスキン外装」を採用するなど、高度な環境性能を追求したビルである。
LEED-CI(米国グリーンビルディング協会による環境対応評価システム)の最高位であるプラチナ認証を日本で初めて取得した。2015年には生物多様性保全に取り組むオフィスビルや商業施設を評価する「いきもの共生事業所®認証」(ABINC認証)を取得し、2016年にはABINC認証事業所のうち特にABINCの普及啓発や生物多様性の主流化への貢献度の高い施設として「第1回ABINC特別賞」を受賞した。同年には、東京都環境確保条例における2015年度「優良特定地球温暖化対策事業所(トップレベル事業所)」に認定(2021年3月に2020年度認定を再取得)された。
2018年2月には東京消防庁の優良防火対象物認定表示制度に基づく「優良防火対象物認定証」(優マーク)を取得(2021年2月に継続取得)した。同年3月には東京都環境局の在来種植栽登録制度「江戸のみどり登録緑地」の優良緑地として登録された。同年10月には飯野ビルディングの事務所基準階部分(7階~27階)がBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)で最高ランク5つ星を取得した。2019年3月には日本政策投資銀行のDBJ Green Building認証で、飯野ビルディングが最高ランク5つ星、汐留芝離宮ビルディングが4つ星を取得(いずれも2021年12月に継続取得)した。2022年5月には、再生可能エネルギーの活用を推進してCO2排出量を削減するための取り組みの一環として、飯野ビルディングの屋上に太陽光発電設備を設置し、運用を開始した。
2021年6月に竣工した日比谷フォートタワーも屋上緑化、低蓄熱型舗装、日光による放射熱を低減するLow-Eガラスの採用、庇による直射日光の遮蔽など環境面に配慮した施設となっている。また、ペットボトル自動回収機を通じたSDGsへの取り組みなども実施している。なお日比谷フォートタワーは(株)日本格付研究所によるグリーンボンド評価およびグリーン評価において最上位の「Green1」総合評価を取得し、(株)日本政策投資銀行からはDBJ環境格付において「環境への配慮に対する取り組みが先進的」との格付を取得している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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