神戸物産 Research Memo(2):「業務スーパー」を軸とした食の製販一体企業として成長(1)
*15:52JST 神戸物産 Research Memo(2):「業務スーパー」を軸とした食の製販一体企業として成長(1)
■会社概要
神戸物産<3038>は、食品スーパーの「業務スーパー」を全国にFC展開するだけでなく、食材となる農畜産物の生産や製造加工なども自社グループで手掛ける国内トップの食の製販一体企業である。事業セグメントとしては、主力の業務スーパー事業のほか、外食・中食事業、エコ再生エネルギー事業の3つの事業セグメント及びその他で開示している。2023年10月期の構成比で見ると、業務スーパー事業が売上高、営業利益ともに96%超を占めており、連結業績の動向は業務スーパー事業とほぼ連動する格好となっている。
1. 業務スーパー事業
業務スーパー事業では、同社が「業務スーパー」のFC本部として商品の企画・開発及び調達などを行っており、「業務スーパー」で販売するPB商品の一部を国内外の自社グループ工場で製造している。2008年以降、M&Aにより食品工場を積極的に自社グループ化しており、現在、国内における自社グループ工場数は25拠点と、食品スーパーとしてその所有数は国内最大級となっている。
「業務スーパー」は業務用をメインとした商品開発・販売からスタートした。中間流通マージンを省いた直仕入れや店舗運営の徹底した効率化により、「品質の良い商品をベストプライス」で提供することにより顧客からの支持を集め、2000年の開業以降、成長を続けている。既存店の売上拡大が続いていることからFCオーナーの出店意欲も旺盛で、店舗数は毎期数十店舗ペースで拡大を続けており、2023年10月末時点で1,048店舗(うち、直営店舗は4店舗)となった。1店舗当たりの売上高※は2023年10月期で426百万円と直近10期間では年率5.7%の増加ペースと、業界平均を上回る成長を続けている。主なFC加盟企業としてはG-7ホールディングス<7508>の子会社である(株)G-7スーパーマートのほか、オーシャンシステム<3096>、マキヤ<9890>、カンセキ<9903>、オートウェーブ<2666>などがある。
※売上高÷期末店舗数で算出。売上高は商品出荷高のほかFC店舗からのロイヤリティ収入、加盟金などが含まれる。2020年10月期に前期比16.5%増と大きく伸びているのは、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による巣ごもり需要で食料品のまとめ買いが発生したためだが、その後も反動減なく拡大基調を続けている点は注目に値する。
食品スーパー業界全体と業務スーパー事業の2012年以降の売上成長率を比較すると、業務スーパー事業は店舗数を拡大していることもあって業界全体を上回る成長を続けており、特に2019年以降は10%以上の開きが出るなど、同社の成長率が際立っていることが窺える。また、大手食品スーパー6社との業績を2017年度から2022年度の実績で比較してみても、6社合計では売上高で20.8%増、営業利益で41.4%増となったのに対して、業務スーパー事業は売上高で82.6%増、営業利益で100.6%増と大幅に上回っており、業績面からも業務スーパー事業の飛躍的な成長が裏付けられる。
業務スーパー事業の売上高のうち、FC本部としてのロイヤリティ収入はFC加盟店への商品出荷高の1%と、FC展開する企業のなかでは低い料率となっている。これは同社の経営方針である、FC加盟企業の収益を拡大することが自社の成長につながるという考えに基づくもので、ロイヤリティ収入で稼ぐのではなく、食品の製造と卸売事業で収益を拡大することを基本戦略としているためだ。なお、FC加盟店はエリアによって直轄エリアと地方エリアに分類しており、契約内容も若干異なっている。直轄エリアの場合は、加盟金220万円(消費税込)、保証金1,000万円の一時金のほか発注システム使用料で月額31,428円(税込)を徴収している。
業務スーパーの取扱商品総数はPB商品、NB商品合わせて約5,590点に上る。PB商品に関しては、国内外の自社グループ工場26工場(うち中国1工場)に加えて、海外の協力工場から調達している。PB商品の売上比率は2023年10月期で34.57%となっており、このうち国内の自社グループ工場で製造した商品が11.1%で、輸入品が23.5%となる。輸入品のうち約半分は中国からで、残り半分を欧米、ASEAN、中南米地域から直輸入しており、輸入先数は約50ヶ国に上る。特徴としては、各国の代表的な製品の品ぞろえに注力している。たとえば、イタリアならパスタやピザ、ベルギーではワッフルやフライドポテト、ベトナムではフォーなどが挙げられる。また、ウクライナからハチミツなどを輸入しており、現在はウクライナ産商品の売上の一部をウクライナやその周辺で被害にあわれた方々へ(公財)日本ユニセフ協会を通じて寄付している。
同社の強みの1つとして、消費者にとって魅力のある商材を自社グループで開発、製造できるだけでなく、約50ヶ国にわたる国とのネットワークを生かしていち早く発掘し、大量に仕入れることができる調達力が挙げられる。なお、生鮮食料品については自社で仕入れせず各FC企業の裁量に任せている。
また、同社は自社グループ会社で農畜産物の生産といった第1次産業も手掛けている。農業に関しては北海道でジャガイモなどを生産しPB商品の原料として使用しているほか、JA(農業協同組合)を通して市場に出荷している。養鶏業に関しては岡山県で「吉備高原どり」、群馬県で「上州高原どり」の養鶏を行い、処理されたチルド鶏肉は新鮮な状態で近畿圏や関東圏に、ウインナーなどの加工品は全国の「業務スーパー」に出荷している。
為替変動の影響に関して、同社は輸入の仕入れ決済の大半を米ドル建てで行っているため(残りは主にユーロ建て)、円安は仕入れコスト高要因(1円/米ドルの円安で年間約4億円)となるが、為替変動リスクを軽減するため、一部為替予約によるヘッジを行っており、ヘッジ部分の損益に関して営業外収支に計上している。一方、為替変動に伴うFC加盟店への卸価格の変更はタイムラグが生じるため、急激に為替が変動した場合などは、収益に与える影響も一時的に大きくなる可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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