日プロ Research Memo(4):利益率は上昇基調
*12:04JST 日プロ Research Memo(4):利益率は上昇基調
■事業概要
2. セグメント別売上高・利益及び利益率の推移
日本プロセス<9651>の収益構成やトレンドを理解するため、通期ベースで過去5期(2020年5月期~2024年5月期)のセグメント別売上高と構成比の推移、セグメント別利益と構成比の推移、及びセグメント別利益率の推移について述べる。通期ベースで比較するのは、一般的にシステム開発業界では年度末の3月に検収(売上げ計上)が完了する傾向が強く、同社の場合も第4四半期(3~5月)の売上げ構成比が高い傾向があるためである。なお、2021年5月期より産業・公共システムとITサービスを統合して産業・ICTソリューションとしたため、2020年5月期の産業・ICTソリューションの数値は従来の産業・公共システムとITサービスの合計値で表示している。また、産業・ICTソリューションに含まれていた航空宇宙関連を2024年5月期より特定情報システムへ移管しているため、2023年5月期の特定情報システムと産業・ICTソリューションについては組替後の数値で表示している。このため2023年5月期と2024年5月期については、特定情報システムが金額及び構成比とも大幅に増加する一方で、産業・ICTソリューションは移管分が減少する形となっている。
売上高と利益の金額ベースの推移を見ると、大型案件の有無や個別案件の採算動向によって変動するものの、各セグメントともおおむね拡大基調となっている。制御システム、自動車システム、組込システムは大手顧客との長年にわたる強固な信頼関係を構築している。なお、特定情報システムでは大規模システム改修が周期的(おおむね5年程度)に行われるため、これに合わせて売上高・利益が変動する傾向がある。構成比で見ると、売上高構成比はおおむね産業・ICTソリューションが3割、自動車システムが2割強、制御システムが2割弱、組込システムが1割強、特定情報システムが1割で推移し、利益構成比(連結調整前)はおおむね自動車システムと産業・ICTソリューションがそれぞれ3割弱、制御システムが2割弱、組込システムが1割強、特定情報システムが1割で推移している。構成比で見ると制御システム、自動車システム、産業・ICTソリューションが主力であることがわかる。
利益率の推移を見ると、個別案件の採算動向によって変動するものの、産業・ICTソリューションを除く各セグメントがおおむね2割強の水準で推移している。自動車システムの利益率は2024年5月期に低下する形となったが、これは川崎事業所開設に係る費用の発生が影響したことによる。この一過性の影響を除けば上昇基調であり、全社ベースの利益率上昇をけん引している。そして全社ベースの売上高営業利益率は2023年5月期に10%台に乗せた。なお同社は後述するように、持続的成長に向けた投資として業績連動賞与の形で社員への還元を厚くしている。このため営業利益率が表面的には低く見えているが、実質的な利益率は高水準である。
顧客と強い信頼関係を構築し、独自のポジションを確立
3. 特長・強み
同社は、エネルギー関連、交通関連、車載制御・車載情報関連、危機管理関連、航空宇宙関連など安全・安心が重視される難易度の高い社会インフラ分野の制御システム、及び自動車関連、半導体関連、建設機械関連など社会インフラを支える機器の組込システムの開発で培った高い品質と信頼性を強みとしている。
主要顧客は日立グループ(日立製作所、日立Astemo)、東芝グループ、キオクシア、日本電気<6701>(NEC)グループ、(株)JR東日本情報システム、ソニーグループ<6758>、アイシン<7259>などである。またIoT建設機械分野における小松製作所<6301>(コマツ)グループとの取引も拡大している。
それぞれの分野で大手優良顧客と強固な信頼関係を構築している。このため受注競合が少なく、顧客からの直接受注(元請け)比率がほぼ100%であることが安定収益につながっている。社会インフラ分野に強みを持つことに加え、システム開発・ITサービス業界において他社との差別化を図り、独自のポジションを確立していることが特長だ。
プロジェクト管理徹底と開発体制強化を推進
4. 収益特性・リスク要因と課題・対策
システム開発・ITサービス業界の一般的な収益特性・リスク要因として、大型案件の受注、個別案件ごとの採算性、プロジェクト進捗遅れによる不採算化などによって、売上高や利益が大きく変動する可能性がある。また、人材難・採用難の影響で開発リソースが不足し、受注拡大のネックとなる可能性がある。
同社の場合、こうした収益特性及びリスク要因への対策として、個別案件ごとの採算性に関しては政策的・戦略的に低採算でも受注する案件もあるが、通常は受注審査委員会によるプロジェクト受注時の審査、プロジェクトレビュー委員会・プロジェクト管理支援部による監視やフォローなど、プロジェクト管理を徹底して不採算プロジェクト撲滅と生産性向上を実現している。
開発リソースに関しては、職場環境や待遇の改善など働きやすい環境づくりを推進して社員の採用・定着や活力・生産性向上に努めるとともに、プロジェクトマネジャー育成プログラムによるプロジェクト管理力強化などによって大規模システム請負能力を強化している。また開発体制強化策として人材採用・育成や中国のオフショア開発拠点の活用のほか、医療画像処理技術を得意とするインドのTrenserと2018年11月に戦略パートナーシップを締結、2019年3月に業務資本提携、さらに2024年8月に戦略的パートナーシップ深化で合意している。今後も、技術力向上や事業領域拡大に向けてシナジー効果が期待できるM&Aやアライアンスを検討する方針としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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