TOKAI Research Memo(3):エネルギー事業とアクア事業が2ケタ増益に(1)
*12:03JST TOKAI Research Memo(3):エネルギー事業とアクア事業が2ケタ増益に(1)
■TOKAIホールディングス<3167>の業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) エネルギー事業
第3四半期累計の売上高は前年同期比5.6%増の73,179百万円、営業利益(間接費用等配賦前営業利益で決算短信とは算出方法が異なる。以下、同様)は同28.8%増の4,836百万円となり、第3四半期においても同5.5%増収、同12.9%増益と収益拡大基調が続いた。
主力のLPガス事業の売上高は前年同期比8.0%増の61,018百万円となった。2024年4月に(株)フジプロを連結子会社化したことで22千件の顧客を獲得したほか、新規顧客の獲得を推進したことなどにより第3四半期末の顧客件数が前年同期比41千件増の808千件と順調に拡大した。顧客件数増に伴い家庭用ガス販売量が同3%増となったほか、工業用において仕入価格に連動した販売価格の引き上げを実施したことが増収要因となった。家庭用の平均販売単価は前年同期比横ばい水準となり、契約世帯当たり消費量は平均気温が前年から若干上昇した影響で同1%減となった。
前期末比の顧客件数は29千件の増加となり、内訳は既存エリア(静岡、関東エリア)で22千件増、新規エリアで7千件増となった。既存エリアについてはフジプロの寄与分を除くと横ばいに留まったが、これは2024年7月のLPガス商慣行是正に向けた改正省令※の施行前に一部の大手競合先が駆け込み的に施行前のルールで顧客奪取したためで、一時的なものと考えられる。実際、第2四半期末比では既存エリアで2千件の増加となった。改正省令施行によって既存の賃貸集合住宅への営業が難しくなったため、今後は新築物件での契約獲得と営業エリアの拡大、並びにM&Aにより顧客件数を積み上げていくことになる。
※ 賃貸集合住宅等の顧客獲得の際に行っていた物品や金銭の授受など過大な営業行為に対して制限を設けた。
都市ガス事業の売上高は前年同期比4.9%減の12,160百万円となった。顧客件数は同1千件減の74千件とほぼ横ばい水準であったが、仕入コストに連動した原料費調整制度による販売価格の低下が減収要因となった。ただ、第3四半期だけで見ると同1.4%増と6四半期ぶりに増収に転じており、販売価格低下の影響が一巡したものと見られる。
営業利益の増減要因を見ると、LPガス事業における顧客件数増加で5億円、戦略的な経費の見直し及び削減で6億円の増益要因となった。省令改正を機に既存集合住宅への営業活動を抑えたことが費用減の主因だ。第4四半期についても顧客獲得競争についての環境に大きな変化はなさそうだが、M&A案件については中小事業者のほか中堅規模の会社についても増えてきているようで、今後は大手事業者によるM&Aも含めた顧客獲得競争が激しくなってくるものと予想される。同社においては総合生活インフラ企業としての強みも生かしながら、新規エリア進出やM&Aによってシェアを拡大していく戦略だ。
(2) 情報通信事業
第3四半期累計の売上高は前年同期比3.7%増の43,358百万円、営業利益は同5.9%減の3,787百万円と増収減益となったが、第3四半期だけで見ると同4.4%増収、同16.6%増益と5四半期ぶりの増益に転じた。
コンシューマー向け事業は売上高で前年同期比3.4%減の17,597百万円、営業利益で同横ばいの719百万円となった。第3四半期末の顧客件数は光コラボサービスが前年同期比10千件増の382千件、「LIBMO」が同1千件増の78千件となったが、従来型ISPサービス等が同13千件減の383千件と減少基調が続き、全体で同1千件減となった。顧客件数の減少に加えて光コラボのARPU低下(携帯キャリア経由の販売比率上昇による)が続いたことも減収要因となった。前期末比では光コラボサービスが9千件増となったものの、従来型ISPサービス等が9千件減となったほか、前期まで順調に増加していた「LIBMO」についても主要販売ルートであったドコモショップが自社サービス「eximo(エキシモ)」の販売を強化した影響で同2千件減となった。営業利益については、減収による利益減を「LIBMO」の顧客獲得費用の減少で相殺した格好だ。
法人向け事業は売上高で前年同期比9.2%増の25,761百万円、営業利益で同7.2%減の3,068百万円となった。売上高は引き続き通信回線サービスやクラウドサービスの伸張により過去最高を更新したものの、賃金改定による人件費の増加や、データセンターや通信インフラなどの設備能力増強に伴う減価償却費の増加が減益要因となった。ただ、第3四半期については同10.5%増収、11.5%増益と増益に転じており、今後は増益基調に転じるものと予想される。なお、2024年12月に事業体制のさらなる強化を目的にITインフラ構築並びにクラウド基盤の導入支援事業を手掛ける(株)ジーアンドエフの全株式を取得し子会社化しており、今後の収益貢献が期待される(2024年3月期売上高711百万円、営業利益27百万円)。
(3) CATV事業
第3四半期累計の売上高は前年同期比1.9%増の27,185百万円、営業利益は同7.0%増の4,979百万円と増収増益基調が続いた。第3四半期だけで見ても同2.1%増収、14.9%増益と拡大基調に変化はない。
地域密着の事業者として地元の情報発信や番組制作に注力するとともに、大手動画配信事業者と提携するなどコンテンツの充実に努めたこと、また光化投資により高速インターネットサービスの営業活動を積極的に進めたことが増収増益要因となった。第3四半期末の顧客件数は放送サービスで同3千件増の922千件、通信サービスで同19千件増の408千件となり、放送サービスの顧客が新たに通信サービスを契約するケースが増えている。賃金改定による人件費の増加があったものの、顧客件数拡大による増収効果で増益となった。
(4) 建築設備不動産事業
第3四半期累計の売上高は前年同期比3.5%増の18,200百万円、営業利益は同0.6%減の1,051百万円となった。特に、第3四半期に売上高で同5.8%減、営業利益で同41.5%減益と落ち込んだ。太陽光発電設備のメンテナンス費用1億円を第3四半期に計上したことや、中京エリアでマンション等の大規模修繕工事を主に展開する(株)マルコオ・ポーロ加工の受注が計画を下回り、利益の足枷要因となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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