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シュッピン Research Memo(4):2024年3月期上期売上高は過去最高。「時計事業」も回復傾向(1)

2023年12月21日 15:04 銘柄/投資戦略

*15:04JST シュッピン Research Memo(4):2024年3月期上期売上高は過去最高。「時計事業」も回復傾向(1) ■決算概要

1. 2024年3月期上期決算の概要
(1) 決算の概要
シュッピン<3179>の2023年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比6.8%増の23,381百万円、営業利益が同0.1%減の1,625百万円、経常利益が同0.8%減の1,632百万円、四半期純利益が同1.3%減の1,111百万円と増収減益となったが、売上高は過去最高(上期ベース)を更新した。また、期初予想に対しては、売上高が若干下回ったものの、営業利益では上回る進捗となっている。

主力の「カメラ事業」については、EC及び店舗ともに好調に推移し、業績全体の伸びをけん引した。引き続きAIを活用したOne to One マーケティングが奏功したことに加え、新製品の販売(第1四半期)や免税売上(店舗)の伸びも増収に寄与した。一方、前期下期にグローバル相場価格の大幅な下落により業績が落ち込んだ「時計事業」については、前年同期比で減収となったものの、価格相場が安定とともに業績も回復傾向にある。特に第2四半期だけで見ると、売上高は第1四半期の1.4倍を超え、前年同期比でも増収に転じている。「筆記具事業」及び「自転車事業」については減収となった。

利益面でも、AIMDのバージョンアップなどを通じて「カメラ事業」を中心に高い売上総利益率を維持した。平均給与増により人件費が増加したものの、売上総利益の伸びで吸収し、営業利益は前年同期並みを確保し、営業利益率も7.0%と高い水準を維持している。

財政状態については、「商品」在庫の減少等により総資産は前期末比2.1%減の14,757百万円となった。一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同8.5%増の7,026百万円となったことから、自己資本比率は47.6%(前期末は42.9%)に改善した。なお、「商品」在庫については入れ替え等に伴い減少したものの、中古EC買取は高水準で推移しており、年末商戦に向け十分な在庫は確保している。

(2) 売上総利益率及び販管費の状況
2024年3月期上期の売上総利益率(全体)は18.8%(前年同期も18.8%)と高水準を維持した。「カメラ事業」におけるAIMDのバージョンアップを図ったこと、「時計事業」でも在庫の回転を通じて利益を確保した販売を進めたことが高い水準を維持できた要因である。一方、販管費については、平均給与増に伴う人件費の増加に加え、売上高連動の販売促進費やクレジット利用手数料などが増加し、販管費比率は11.9%(前年同期は11.4%)と僅かに上昇したが、11%台でコントロールできているという見方が妥当と言える。

2. 事業別の業績
(1) カメラ事業(EC比率:85.3%)
売上高は前年同期比14.7%増の17,591百万円、セグメント利益は同17.5%増の2,072百万円と順調に拡大し、過去最高業績(上期ベース)を更新した。引き続きAIMD、AIコンテンツレコメンドといった、AI活用による独自機能やサービスによるOne to Oneマーケティングが奏功し、EC売上高が好調に推移した。特にAIMDのバージョンアップによってカメラ製品の販売・買取価格の変更回数をこれまでの1.2倍に増やしたことも収益の底上げに寄与したようだ。また、店舗売上についても、免税売上の回復とともに大きく伸ばすことができた。一方、利益面では、増収やAIMDの効果などにより、人件費増などをこなしながら増益を確保し、セグメント利益率は11.8%(前年同期は11.5%)と過去最高水準に達している。

(2) 時計事業(EC比率:47.5%)
売上高は前年同期比12.2%減の5,154百万円、セグメント利益は同41.5%減の187百万円と減収減益となった。売上高は、高級時計価格の相場下落による影響がまだ小さかった前年同期と比べて減収となったものの、その点は想定内である。6月以降の売上高が回復に転じたことから、第2四半期だけで見ると、第1四半期の1.4倍を超え、前年同期比で増収を確保している。一方、利益面でも、減収による収益の押し下げにより減益となり、セグメント利益率も3.6%(前年同期は5.5%)に低下した。ただ、価格相場が安定に向かうなか、相場上昇に依存せずに利益を確保した販売ができており、第2四半期の利益率は大きく改善している※。また、活動面では、在庫の拡充に向けて、オンライン買取見積の強化に取り組み、目標を上回る6,000超アイテムに対して、うち99%超のアイテムを「ワンプライス買取」の対象とすることができた。

※第1四半期のセグメント利益率は2.6%、第2四半期は4.4%と改善傾向にある。


(3) 筆記具事業(EC比率:71.0%)
売上高は前年同期比2.9%減の207百万円、セグメント利益は同61.2%増の25百万円と減収増益となった。EC売上高が伸び悩むも、高額品、高利益品の販売が進み、大幅な増益を実現した。

(4) 自転車事業(EC比率:57.1%)
売上高は前年同期比6.9%減の427百万円、セグメント利益は同39.7%減の18百万円と減収減益となった。円安による完成車価格の上昇や、コロナ禍の健康需要の一服感から、EC売上高が伸び悩んだ。

3. グローバル展開
越境ECについては、これまで2017年8月に「Map Camera」(カメラ事業)にて世界最大級のオンラインマーケットプレイス「eBay」へ出店したほか、「GMT」(時計事業)についても、2019年5月に世界最大級の高級腕時計マーケットプレイス「Chrono24」、2020年7月には「eBay」にも出店すると、2022年には海外向け販売サポートサービス「Buyee Connect」※を導入し、事業拡大に向けた体制を着実に整えてきた。サービスの質を重視した展開が奏功し、海外でのブランド力も確立されてきており、特に「Map Camera」については、「eBay Japan Awards 2022」で最優秀賞を受賞している。これらの取り組みを通じて、越境ECは着々と売上高を伸ばしており、2024年3月期上期についても前年同期比14.6%増の1,536百万円に拡大した。

※BEENOS<3328>の連結子会社であるBeeCruise(株)が運営する海外向け購入サポートサービス。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

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