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ギグワークス Research Memo(4):オンデマンド性の高い業務を創業来758万件以上マッチング(1)

2025年01月22日 11:04 銘柄/投資戦略

*11:04JST ギグワークス Research Memo(4):オンデマンド性の高い業務を創業来758万件以上マッチング(1) ■ギグワークス<2375>のビジネスモデル

1. ヒト・スキルのシェアリングを行うオンデマンドエコノミー事業
同社のビジネスモデルは、“IT関連の仕事を中心としたマッチングプラットフォーム”に特長がある。依頼を受ける仕事は多岐にわたり、創業来6,542社、毎月1,000社以上から仕事を受ける。同社は“パソコン家庭教師”から出発した経緯もありIT関連(設置、トラブル対応、システム開発など)を得意とするが、現在はIT関連以外(販売、コールセンター、調査など)も増えている。IT関連での事例としては、PCやタブレットのキッティング、アンテナ基地局設置、バス停工事(IoT対応)などがある。大手通信会社や大手SI会社、外資系PC会社など大企業からの依頼が多く、継続的なパイプを持つのが同社の強みである。IT関連以外の事例では、フードデリバリーサービス企業に対しての店舗開拓営業、店頭でのPCや家電の販売、多言語コンタクトセンター(1,112席)、ミステリーショッパー(覆面調査)、製品リコール、補助金・助成金の事務処理、世論調査や選挙開票機器のセットアップなどがある。特に全国規模での短期集中(単発短期、即時対応)の依頼は同社でなければ受け手がいない場合が多く、同社の存在価値を高めている。これまで依頼主は比較的大きな法人・団体が主だったが、中小企業や個人向けも増加している。

創業以来、同社は758万件を超えるマッチングを行い、多様な働き方を支援してきた。仕事を行うのは、同社の従業員とともに10万人を超える登録ギグワーカーである。2024年10月期に稼働したワーカー(ユニークワーカー)は4,013名となる。ギグワーカーにはスキルの高いフリーランスが多いことに加え、常時雇用ではないため、同社の固定費負担は極力抑えられる。ギグワーカーにとっては、同社が営業して企業から様々な仕事を受けるため、自分に合ったライフスタイルで働きながら、スキルのアップデートも図れるというメリットがある。

同社のプラットフォーマーとしての役割として重要となるのが、「登録ギグワーカーのスキル・実績・評価の管理」と「マッチング」である。「登録ギグワーカーのスキル・実績・評価の管理」については、教育の支援によるスキルアップを促進する、実態に即した評価を行うなど、様々な工夫をしている。「マッチング」については、システムによる自動的なマッチングに加え、同社社員によるきめ細かな調整作業も行っており、これが強みとなっている。同社社員がプロジェクト管理を行う業務委託もあれば、依頼主の要望で派遣契約にも対応するなど、多様な形態を提案している。

2021年10月期には、ギグワーカー(働き手)とクライアント企業(発注者)の間で、仕事の受発注が直接できるプラットフォーム「GiGWorks Basic」が本格稼働した。クライアント企業は、仕事の募集から契約の締結、委託報酬料の支払いまでを一括して同サイト内で行い、利用料金は「仕事成立の際に支払報酬額の10%」と業界標準よりも廉価である。一方ギグワーカーは、「GiGWorks Basic」サイトを通じて経歴、保持するスキルの一覧、これまでの受託実績内容の履歴、企業からの評価を表示することで自己アピールし、利用料金は無料である。シフトカレンダープラットフォーム機能(特許出願中)や決済手段、eKYC(オンライン本人確認)機能が整っており、利便性が高い。同様のサイトサービスはクラウドワークスやランサーズなども展開しており、各社とも利用者数を増やしている。2023年3月には、同社のマッチングプラットフォーム「GiGWorks Basic」がイオレ<2334>の運用型求人広告プラットフォーム「HR Ads Platform」と連携開始した。「GiGWorks Basic」は「HR Ads Platform」に自動出稿された求人広告を掲載することで、サイト内の求人情報を従来の掲載数から100倍以上と大幅に充実させ、ギグワーカーの多様な働き方や新たな仕事の出会いを支援している。今後も継続的に広告宣伝やシステム改善に積極投資を行う予定である。

2024年10月期通期のオンデマンドエコノミー事業の売上高は前期比5.4%減の10,819百万円、セグメント利益は同62.0%減の271百万円となった。旺盛だったコンタクトセンター需要は落ち着きをみせたものの、IT機器のキッティングや設定設置業務などのフィールドサポート業務が前期比で持ち直した。Web3領域のSnap to Earnアプリ写真を撮って稼ぐ「SNPIT」への戦略的投資を下期に行ったことにより、オンデマンドエコノミー事業のセグメント利益を押し下げた。

2. 収益構造の変革が進展するデジタルマーケティング事業
同社は2022年7月に、中堅の通販専業会社2社の全株式を取得し、通販事業に参入した。そのうちの1社である日本直販は日本屈指の通販ブランドである。日本では誰も通信販売を認知していなかった1976年に「日本直販」をスタートし、店舗では販売していない斬新かつユニークな商品をテレビCMによって販売することで一大ブームを起こした老舗ブランドであり、創業開始から48年経った今も、通信販売業界の先駆者としての存在感を示し続けている。悠遊生活は、自社ブランドのショッピングカタログ「悠遊生活」を中心とした通販事業を展開する一方で、近年はECサイト利用客も増加している。取り扱い品目は、健康・美容用品、くらし・生活雑貨、レジャー・趣味用品をはじめ、浄水器、カメラ・望遠鏡などの光学機器、時計、電子製品、ファッション、食品など、取り扱いアイテム数は約2,000に及んでいる。同年10月には、両社が合併し、新生「日本直販」として再スタートを切った。

新生「日本直販」では、物販の強みはそのままに、主な対象顧客であるシニア層に向けたサービス強化を基本戦略としている。その一環として開始されたサービスとして、ギグワーカーのフィールドサービス力とコンタクトセンターのコミュニケーション力を活用した「駆けつけサービス」や「デリバリーサービス」など「訪問お手伝いサービス」がある。このサービスは、日本直販で販売した商品に関して、フィールドサポート部隊が購入者の自宅を訪問し、商品の設置、組み立て、使用サポートなどを行う。ヤング・ミドル層に向けては、総合プロデュースを担う秋元康氏と連携した新たな施策がスタートしている。

2024年10月からはプレミアムプラス会員制度を開始した。顧客のLTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)を向上させ、サービス販売を追加する方針にそった戦略施策である。商品の割引(常時最大5%OFF)、送料・返品送料無料、などのほかに、購入した商品の延長保証、自転車や電動車椅子使用時など日常生活での賠償責任補償(上限3億円)や寺社仏閣関連サービス、葬儀社のご紹介、チャットAIによる“私の寿命”アドバイスなど様々な会員限定サービスが受けられる。

2024年10月期のデジタルマーケティング事業の売上高は前期比16.3%減の5,335百万円、セグメント損失は284百万円(前期は112百万円の損失)となった。一時費用が発生する倉庫移転やWeb販売停止を伴う基幹システム刷新など、長期的な固定費圧縮につながる先行投資を期中に行った。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

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