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Jトラスト Research Memo(9):3ヶ年計画は現状を前提にした保守的な計画で、上振れを目指す(2)

2025年09月09日 15:09 銘柄/投資戦略

*15:09JST Jトラスト Research Memo(9):3ヶ年計画は現状を前提にした保守的な計画で、上振れを目指す(2) ■Jトラスト<8508>の中長期の成長戦略

2. 事業セグメント別の成長戦略
(1) 日本金融事業
信用保証事業・債権回収事業の安定成長により、2027年12月期に営業利益75億円(2024年12月期比5億円増)を見込み、安定的な利益計上によって同社グループ全体の業績を下支えする計画である。

同社は、安定的な保証事業と債権回収事業を主軸に、カード事業(割賦)の加盟店拡大による割賦売掛金の増加により収益増を見込む。証券事業では預かり資産の拡大を図り、地域金融機関との連携などを通じて富裕層向けプライベートバンキングビジネスを拡大する。Jトラストグローバル証券は、2024年12月末時点の4,092億円の預かり資産を2029年12月末までに1兆円を目指す。Jトラストグローバル証券の業績貢献は、2025年12月期予想のみ日本金融事業の営業利益に織り込んでいるが、2026年12月期以降の計画には織り込んでいないことから大きなアップサイドが期待される。預かり資産1兆円達成時には、30〜35億円程度の営業利益を見込んでいる。

(2) 韓国金融事業
韓国金融事業における再構築や引当金の戻入等による回復によって、2027年12月期に営業利益55億円(2024年12月期比46億円増)を見込み、再成長を計画する。

韓国では貯蓄銀行2行(JT親愛貯蓄銀行、JT貯蓄銀行)及びサービサーを運営している。貯蓄銀行は主に個人や中小企業向け融資を中心として貸出業務を行う金融機関であり、貯蓄銀行79行のうち、同社グループの貯蓄銀行2行合計の総資産額は業界6位(2025年3月時点)である。貸出残高は底を打った状態であり、今後は厳格な貸出審査を維持しながら、黒字計上に伴う資本の拡大とともに貸出残高を増やす方針だ。両行とも預貸スプレッドは改善傾向にある。不良債権比率は、JT親愛貯蓄銀行が引当金控除後で低水準を維持しており、JT貯蓄銀行はやや高いものの不動産等の担保で保全済である。2025年12月期からは貸出残高の増加に伴う収益増を中心に成長の見込みだが、特に2026年12月期以降については貸倒関連費用の減少と貸付利息収益率の改善により、利益が大きく改善する見込みである。

(3) 東南アジア金融事業
経済成長に伴うインドネシアとカンボジア両行の成長継続によって、2027年12月期に営業利益53億円(2024年12月期比38億円増)を計画する。厳格な与信審査や貸倒引当を維持するが、インドネシアの増資による貸出増により利益の上振れが期待される。

Jトラスト銀行インドネシアでは2024年12月期第4四半期には複数の大口の貸出債権が一括完済された影響があったものの、貸出残高は安定して増加傾向にある。ただしバーゼル規制※の関係上、今後について同様のペースで貸出残高を伸ばすには資本増強が必要な状況である。そこで日本の銀行・企業や現地企業など、同社グループ外からの増資を基本とし、増資のタイミングに合わせて貸出を実施する計画である。2027年12月期の営業利益計画には貸出残高の増加に伴う増収増益を見込むものの、インドネシア事業の資本増強による成長可能性を織り込んでいない。増資が実現すれば計画の上振れ要因になる。

※ 自己資本比率や流動性比率に関する国際統一基準であり、金融機関の取るリスク量に対する制限。

インドネシアはコロナ禍の2020~2021年を除き、年率5~6%の実質GDP成長が継続している。インドネシアの人口は約2億7千万人と世界第4位であり、マーケット規模が大きい。加えてニッケル・天然ゴム・石炭など豊かな天然資源を有しておりその領域への貸出機会が豊富であることから、インドネシア銀行業界の成長ポテンシャルは高いと言える。そのなかでJトラスト銀行インドネシアは、現地に同社の代表取締役副社長が常駐し、スピーディな決裁を可能にしている。ただ、同行はまだ復調の途上であり、インドネシア商業銀行全体に比べてROAと純金利マージンの上昇余地が大きい。一方で、不良債権比率は業界水準を大きく下回る。これは国営企業や大企業など信用力の高い企業に低金利で融資をしており、優良貸出残高を伸ばすことで不良債権費用を発生させずに利益を確保する戦略を採っているためだ。今後も同行が加速度的に利益を拡大することで、グループの成長ドライバーになると期待される。

カンボジアでは、コロナ禍以降に中国からの不動産投資が減少した影響により同行の営業利益は買収前の25~30億円の水準に戻っていないが、引き続き安定した利益を計上している。首都プノンペンでは中断していた建設工事の再開・着工の動きもあり、資金需要の回復が期待される。Jトラストロイヤル銀行では、事業環境の落ち着きを踏まえ、貸出残高をコントロールする方針から徐々に増やす方針へ転換する。担保物件の競売や法的手続き等による回収とモニタリングを強化し、不良債権化の抑制に取り組む。

(4) 不動産事業及び投資事業
不動産事業では安定的な拡大を目指し、2027年12月期に営業利益11億円(2024年12月期比8億円増)を計画する。また、投資事業では、裁判関連費用の負担が減少する一方、回収は最低限を見込むことで、営業損失4億円(2024年12月期比11億円の損失減少)を計画している。回収が進んだ場合は、計画を上回る可能性がある。

以上のように、「J TRUST VISION」ではグループ全体の業績計画に加え、従来の3ヶ年計画にはなかった事業セグメント別の営業利益計画についても開示しており、より中期経営計画に近い具体的な内容となった。将来の業績予想や計画の達成状況に基づいて株式への投資を検討する投資家にとって、より参考になる内容であると弊社では評価する。引き続き同社グループの成長戦略の進展が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

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