BS11 Research Memo(8):「Value4」のもと、放送を軸としたコンテンツ多角化で企業価値向上を目指す
*13:08JST BS11 Research Memo(8):「Value4」のもと、放送を軸としたコンテンツ多角化で企業価値向上を目指す
■日本BS放送<9414>の中長期成長戦略
1. 中期成長戦略「6つの“力”」の強化・実践
2020年8月期より番組制作と販売の一連の流れに沿って、1) マーケティング力:データベースの分析・活用による潜在的な需要喚起、2) 企画力:視聴者やクライアントのニーズを捉えた企画立案、3) 戦略構築力:環境変化に応じた機動的かつ効果的な戦略構築、4) 実行力:知恵と知識を結集して戦略を強力に実行、の「4つの“力”」を打ち出し、良質な番組づくりへの実効性を高めた。2021年8月期からは、5) 変化対応力:経営環境の変化に応じた戦略を構築する力、6) 改革推進力:過去に囚われず新たな挑戦を続ける力、を加え「6つの“力”」として実践している。
2. 2026年8月期の重点施策「Value4」
2026年8月期は、重点施策として、「I.放送事業収入の最大化」「II.独自IPコンテンツの開発加速」「III.アニメビジネスの収益基盤拡充」「IV.企業価値向上のための戦略的投資」の4点を掲げ、「Value4」として推進していく。2026年8月期の計画では、放送収入の回復とIPコンテンツやアニメへの投資拡大による周辺事業収入の積み上げを目指しており、これら重点施策の推進で強力に後押しする。
(1) 「I.放送事業収入の最大化」
本業である放送事業では、収益基盤の拡大に向けて、旗艦番組『鶴瓶のええ歌やなぁ』や『黒谷友香、お庭つくります』をはじめとした自社制作番組へのテコ入れを積極的に推し進める。具体的には、報道番組『報道ライブ インサイドOUT』において、2025年10月より新メインキャスターに元日本テレビの近野宏明氏を迎え、番組コンセプトやスタジオセットを一新する等の策を行った。報道番組としての中立性と正確性を保ちつつメインキャスターの若返りを図ったことで、フレッシュな魅力で視聴者の関心を集めることが期待されている。番組ごとの内容のブラッシュアップを着実に進め、“視聴者に選ばれる局”を目指す。さらにタイムテーブル強化策の一環として、視聴率や視聴者からの反響等のタイムテーブル全体に関わるデータ分析を強化し、コンテンツへ迅速に反映する。具体的には、ドラマの視聴動向を細かく分析してコンテンツ調達に生かし、タイムテーブルを最適化することで視聴者の興味を一定レベル以上に保ち、スポンサー企業からの広告出稿獲得を目指す考えだ。
(2) 「II.独自IPコンテンツの開発加速」
IPの積極活用による多面的な事業展開やコラボレーション施策の開発を加速する。他局への番組販売や、放送後の見逃し・アーカイブ配信、関連イベント実施、関連グッズ販売等の周辺事業は施策展開により既に拡大しているが、今後は番組の企画・制作段階から著作権等の知的財産確保を意識したコンテンツづくりを行うことで、IPとしての番組価値向上とその活用による収益力強化を図っていく。コラボレーション施策としては、メディアを超えた施策を推進する。一例として2025年10月より、エフエム東京との協業で『うらラジ supported by TOKYO FM』の放送を開始している。人気のラジオ番組の制作現場の裏側に迫る構成で、ラジオへの興味を高めるとともに、ラジオリスナーを同番組の視聴者として迎えるというWin-Winの関係から成長を目指す。また、子会社である理論社と国土社との協業により、両社が保有する出版物のIPを活用した映像コンテンツを制作し、配信やテレビ、イベントへと多角的に展開していく取り組みにも着手する。既に、映像化の取り組みは進んでおり、第1弾として、人気作家・高森千穂さんによる国土社刊行の最新児童書作品『雨上がりのスカイツリー』のドラマ化決定がリリースされた。理論社は1947年創業で業歴78年、国土社は1937年創業で業歴88年といずれも業界の老舗で豊富なコンテンツを有するほか、両社とも児童書に強く、指定図書に選ばれるなど学術的側面での優位性が高い。ドラマやアニメ等による展開で顧客層を広げ、実績が蓄積されれば両社における業績の大きな飛躍につながるだろう。
(3) 「III.アニメビジネスの収益基盤拡充」
引き続き良質なアニメコンテンツの確保を図るとともに、アニメ分野の価値向上に資するような新規事業を強力に推進する。前者は、2026年8月期は、これまで段階的に行ってきた投資額の拡大の動きを強めていくとともに、アニメファンの動向やアニメ放送後の関連ビジネスへの展開可能性を精緻に分析していくことで放送する作品の選定精度の向上を図り、毎クール約40タイトルの良質なアニメ関連番組を放送する。視聴率向上をもって、アニメ放送枠における広告出稿の積み上げや製作委員会からの配当増を確保する狙いがあるようだ。また、後者については、こうした放送するアニメ作品の価値最大化及び多角的展開による収益の積み上げを図るべく、他社との協業によるイベントや商品化等の推進にも取り組む。一例として、九州最大のマンガ・アニメのイベント「KPF(北九州ポップカルチャーフェスティバル)2025」(2025年11月開催)では、レギュラー放送中の総合エンタメ情報番組『アニゲー☆イレブン!』に出演の前田佳織里さんをMCに、2026年1月から放送予定のアニメ作品『エリスの聖杯』に関するスペシャルステージを開催。また、2026年2月には、レギュラー放送中のアニメソング番組『Anison Days』から生まれた音楽の祭典「Anison Days Festival2026」の開催が決定している。このように、数々のイベントを通じて、BS11のアニメ分野としてのプレゼンス向上に取り組んでいるほか、(株)壽屋との協業によるオンラインくじの販売のような将来的な事業拡大を見据えた協業の一環としての取り組みも推進している。
(4) 「IV.企業価値向上のための戦略的投資」
新たな領域への投資機会を追求し、持続的成長を実現するための環境を、2つの施策を柱に構築する。1つ目は事業の多角化による収益力の強化である。放送を軸としたコンテンツの多角的な展開を促進し、安定的かつ効率的な収益体制を構築することにより、2030年代にかけて売上高130億円超、営業利益率20%超を目指す。2つ目はM&Aや資本業務提携等の他社とのアライアンス締結の検討である。財務健全性を維持しつつ、収益の柱である放送事業を拡大し、アニメや配信をはじめとした成長事業分野や新規事業分野で、企業価値向上に資するM&Aや資本業務提携等の投資機会について慎重に検討を進めながら推進していくことで、中長期的な企業価値の向上に結び付ける。これにより、放送事業収入以外の収入を、2025年8月期の7.6%から2030年代にかけて15%超へとすることを目指す。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
<HN>