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日創プロニティ:M&Aで成長拡大、再エネ・データセンター向け製品等展開し事業拡大

2025年06月02日 09:41 銘柄/投資戦略

*09:41JST 日創プロニティ:M&Aで成長拡大、再エネ・データセンター向け製品等展開し事業拡大 日創プロニティ<3440>は、中小製造業を中心にM&Aで非連続的に事業拡大を展開する企業グループである。主要事業セグメントは「金属加工事業」「化成品事業」「建設事業」「タイル事業」で、グループ各社が連携し、多様な素材・加工技術を活かし、顧客ニーズに合わせた特注・別注対応を強みとする製品・サービスを提供している。売上構成は金属加工、建設、タイルおよび化成品が続く。同社は中小製造業を中心にM&Aでグループへ迎え入れ、『「創る」力で未来に挑む企業グループ』をグループビジョンに掲げて事業領域を拡大。設計から材料調達、加工、施工、納品に至るまで一貫対応可能な体制を整えており、特に建設事業をグループに持つことで材料と施工の「材工一括」での提供で付加価値を提供している。業界は建築建材関連の製品を中心に、再生可能エネルギー、データセンター、クリーンルーム、半導体、農業・畜産など幅広い業界向けに、多彩な製品を提供している。

同社の擁する各事業会社の強みは、特に顧客のオーダーを形にする加工力である。例えば、金属加工事業セグメントにおいては、主力分野として産業用太陽光発電設備向けの太陽電池アレイ支持架台や食品工場・薬品工場・半導体工場等のクリーンルームや物流倉庫等に用いられる金属サンドイッチパネル、データセンター等で用いられる非常用発電機向け防音・消音筐体等を、顧客の要望に合わせて製造しているが、その設計から生産、製造品目によっては施工にいたるまでをグループ内で完結できるため、競争優位性を発揮できる。さらに積極的なM&A戦略で事業領域を拡大しており、化成品・建設・タイル・木材・システム開発といった異素材のものづくり企業や、ものづくりに付随した事業を行う企業をグループに取り込むことで、加工に関するあらゆるニーズを自社で取り組める企業を目指している。多業種向けの販売チャネルや加工力(「創る」力)を獲得し、競合他社と比べて広範な領域でサービス提供できる点が際立っている。

2025年8月期上期累計の売上高は12,189百万円(前年同期比44.8%増)、営業利益は862百万円(同6.0%増)と増収増益で着地した。金属加工事業は金属サンドイッチパネル等が伸長したが、成長機会を見据えた大型案件で一時的に利益率へ影響が生じて減益。化成品事業は、M&Aによりグループ化した2社の業績寄与により増収増益。建設事業は、主に東京再開発案件及び太陽光関連工事の進捗により増収増益。タイル事業は、建設資材高等の影響が一部あるものの、積極的な営業活動により微減推移となった。通期の売上高は20,200百万円(前期比14.2%増)、営業利益は1,281百万円(同0.4%増)を見込む。耐火パネルなどの金属サンドイッチパネル及びオーダー加工品の材工での受注、データセンター案件に紐づく受注が堅調に推移することに加え、大鳳の子会社化による業績寄与の影響を見込んでいるが、持株会社体制への移行を見据えた人財・新規事業・新製品開発のための先行投資が増加する他、運送費の増加や主に建設事業において人手不足等に起因する工事外注費の増加を織り込んでいる。

同社は第4次中期経営計画を開示しており、最終年度2027年8月期は売上高300億円、EBITDA27億円を目指している。基本方針としては(1)成長ドライバーとして重要視するM&A投資(投資枠50億円)、(2)人財・新規事業・新製品開発への先行投資(投資枠10億円)、(3)プロフェッショナル人財「七人の侍」によるグループ支援体制の拡充、(4)資本コストや株価を意識した経営でROE目標8%、と4つを掲げている。事業のコアである「創る」力を軸に、様々な素材、加工技術を有する製造業やその周辺事業を中心に、M&A方針「日創M&Aセブンルール」をもとに中小企業を中心にM&Aを推進していく。同社は中小企業が抱える後継者問題を解決する社会的な価値が大きいことと、当社グループの持続的な成長にも寄与するという経済的な価値も大きいと考えているようだ。

同社グループに影響を及ぼしうる事業環境は、M&A市場・金属サンドイッチパネル市場・データセンター市場・タイル市場など8つ存在する。中小企業において事業承継ニーズは依然として高く、生成AI需要を背景としたデータセンターが急増しているほか、金属サンドイッチパネル市場・タイル市場も一定の市場規模が存在しており、懸念材料には乏しい。

ROEは2022年8月期を境に改善しているが、PBRは0.4~0.6倍で推移してPBR1倍を下回っている。早期にPBR1倍以上を達成するため、ROE目標8%とPER目標12.5倍を掲げており、稼ぐ力と成長期待度をあげていく方針である。中長期的には、M&Aによる事業領域拡大と自社ノウハウ蓄積が成長を牽引すると見られる。特に、金属加工に加えて化成品・建設・タイル・木材・ECサイト運営・システム開発を含む複数分野のグループ展開で、ワンストップ型ソリューションの市場競争力を強める戦略。政府の再エネ推進や国内建築投資の回復、データセンター国内投資の状況も追い風であり、グループ総合力を生かした今後の成長に注目しておきたい。

<HM>

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