ウエスコホールディングス:地域密着型コンサルで描く持続的成長
*10:39JST ウエスコホールディングス:地域密着型コンサルで描く持続的成長
ウエスコホールディングス<6091>は、2014年に持株会社体制へ移行した総合建設コンサルタント企業であり、「未来に残す、自然との共生社会」を企業理念に掲げている。主力事業は道路・橋梁・上下水道・防災施設などの社会インフラに関する設計・調査・測量を担う総合建設コンサルタント事業で、売上高の約8割を占める。また、スポーツ施設運営事業や水族館運営事業も展開し、地域社会の生活・文化インフラに根差した多角的な収益モデルを確立している。水族館では「四国水族館」(香川県)や「アトア」(兵庫県)などの主要施設を運営している。
同社の強みは、第一に官公庁を中心とした安定した顧客基盤である。入札案件の約9割を官公庁が占め、地方自治体との長年の信頼関係が強固な事業基盤を形成している。第二に、調査から設計までを一貫して自社で行える技術力であり、外注に頼らず高効率な業務遂行が可能となっている。第三に、財務体質の健全性であり、自己資本比率が高水準にあり、安定した資金基盤を背景に中長期的な成長投資や株主還元を実現できる点が挙げられる。さらに、技術者の層が厚く、上下水道や防災分野での専門性を備えており、近年の国土強靭化施策による需要増加にも対応できる。
2025年7月期第3四半期の業績は、売上高が前年同期比3.6%増の12,382百万円、営業利益が同21.0%増の938百万円となり、増収増益を確保した。公共事業関係費が安定的に推移するなか、西日本全体での受注が順調に積み上がったことが寄与した。特に主力の建設コンサルタント事業は、防災・減災対策や老朽化した社会インフラの維持・管理等の国土強靭化の必要性の高まりに伴う需要増で売上・収益ともに堅調に推移したで。スポーツ施設運営事業は新型コロナ禍からの会員数回復と利用料金改定効果で黒字転換を果たした。一方、水族館運営事業は四国水族館とアトアの来館者数が伸び悩み、減収減益で推移したが、イベント強化や広告費抑制による収益改善策を実施している。通期は売上高で前期比1.9%増の16,024百万円、営業利益で同0.1%増の943百万円が予想されている。
今後の成長見通しとして、同社は第一次中期経営計画(2024年7月期~2026年7月期)を策定し、ROE5%以上、売上高170億円、営業利益率6.4%をKPIに設定している。建設コンサルタント事業では防災・減災関連業務を重点領域に定め、関東・九州エリアへの受注拡大を図る。また、DXの推進や3次元調査・設計技術への研究開発投資により生産効率を高め、競合との差別化を強化する方針だ。スポーツ施設運営事業ではフランチャイズ展開を加速させ、ブランド力と収益性の向上を目指す。水族館運営事業では小規模都市型水族館の新規出店を通じて事業領域の拡大を進める。
株主還元については、DOEを重視した配当方針を掲げ、配当性向40%を目安として安定的な配当を実施している。2025年7月期の配当は1株当たり24円とし、今期も同水準を予定しており、総還元性向は100%近くに達している。設備投資負担は限定的であり、創出したキャッシュフローを株主に還元する姿勢が鮮明である。さらに、自己株式の機動的な活用も検討しており、資本効率の改善と株主価値向上に向けた取り組みを加速している。
総じて、同社は安定した公共事業需要を背景に成長を続けつつ、多角的な事業展開により収益基盤を強化している。財務体質の健全性を生かしながら、中期経営計画で掲げるROE改善や新規事業展開に取り組む姿勢は評価でき、今後の業績成長と株主還元の両立に注目していきたい。
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