P-京橋アートレジ Research Memo(5):ネットワーク、商品力、事業展開力に強み
*11:05JST P-京橋アートレジ Research Memo(5):ネットワーク、商品力、事業展開力に強み
■京橋アートレジデンス<5536>の事業概要
4. 同社の強み
同社の強みは、ネットワーク、商品力、事業展開力にある。ネットワークはさらに、推進力、企画力、監理力、一気通貫した体制といった強みにもつながっている。こうした強みを背景に、東京23区内の住環境や生活利便性、賃貸需要の高い立地に、4~5階建て、8~14戸数という、他社があまり手を出さないニッチな不動産を開発、富裕層にとって手頃で優位性の高い3億円~5億円という価格で販売することで、高い事業収支率を達成している。また、そうした強みは認知度と信用度向上の源泉にもなっており、同社の成長を支えている。
ネットワークは、ニッチな新築マンションを建設できる施工業者など協力会社とつながることで、開発から販売までおおむね2年という短期間で事業を展開する推進力、同社内の建築企画部を中心にグループ企業や協力会社を巻き込んだ企画力、用地取得から設計施工、販売・賃貸に至る協力会社に対する監理力という強みを生みだし、さらに開発から販売までの一気通貫した体制の構築にもつながっている。ネットワークはさらに、知名度や信頼が高まるにつれ不動産仲介業者や銀行、証券会社、税理士事務所、会計事務所との関係も太くしている。同社とこうした企業・事務所はターゲットがともに富裕層であり、同社が顧客を紹介してもらうだけでなく、同社との取引によって顧客に金融や税務、運用、資産処理などのニーズが発生するため、相互補完の関係にもある。また、顧客紹介などの点で富裕層とのネットワーク、情報交換の点で同業とのネットワークも強みと言える。特に同業とは、一般的な競合関係に陥ることも多いが、資産形成用一棟収益マンションという競合が起きるにはニッチ過ぎる市場においては、顧客情報や販売価格情報など情報交換を行うことで共存共栄が図られている。同社業態に近い新築投資用マンションのタスキが2024年4月に資産運用型の新日本建物と合併してより大きな共同持株会社タスキホールディングス<166A>となったが、同社にとって脅威というより情報力強化の点でメリットが大きい。同社はこうしたネットワーク力をさらに強めるため、共同事業、事業提携、資本提携など取引先との関係強化を目的に2024年4月に情報開発部を新設した。さらに同年6月、証券関連事業と中古不動産再生など不動産関連事業を併営するあかつき本社<8737>と提携し、資産形成用収益賃貸マンションを共同開発する予定で、富裕層ネットワークの強化も期待される。
しかし、商品力や事業展開力がなければ、こうしたネットワークも生かすことができない。このため同社は、トランクルームやカーシェアを設置したり、防音マンション「ラシクラス(RASICLAS)」を供給する(株)らしくと提携してミュージシャンやユーチューバー、ゲーマーからのニーズが高い防音マンションを開発するなど、企画力やデザイン性、資産価値の高い商品を安定供給できるよう商品力を強化している。また、不動産テック企業と提携することで不動産開発にDXを導入するなど生産性と効率性の高い事業展開を行っており、相対的に高い事業収支率を実現している。同社は、シナジーを考慮したうえでスタートアップ投資を行っており、2024年6月オンライン上のロケーション情報を管理するDXを得意とする(株)エフェクチュアルに投資し、事業展開力の強化を図っている。さらに、リノベーション再販事業において、多様化するニーズに対応したリノベーション住宅開発や省エネ住宅など事業領域の拡大を目的に(一社)リノベーション協議会に入会した。ESG関連事業においても、環境課題や社会課題に継続的に取り組むことで様々な企業と関係を構築し、ネットワークを強化している。
人材の確保・育成と資金調達の多様化が課題
5. 同社の課題
企業規模が拡大するなか、強みをさらに発揮するためには、人材の確保と育成及び資金調達の多様化が課題になる。東証TOKYO PRO Market上場によって管理面の人材が補強でき、内部統制やリスク管理体制の整備・強化及びコンプライアンスの徹底は進んだ。今後は、ニッチで参入企業が少ないため開発余地が非常に大きい新築マンション開発事業及びニーズが急速に強まっているリノベーション再販事業において、開発や企画の人材を増強する計画である。また、総資産105億円に対し在庫が65億円、借入金が82億円という財務体質(2024年11月期末)も課題と言える。在庫自体がプロジェクトとして資金調達と紐付いていること、金融機関とのネットワークが強固になったことから、今後も借入金と在庫を増やすことで事業規模の拡大が可能と考えられる。ただし、在庫と紐付いているとはいえ借入金の大きさはリスクと言える。財務的にも、在庫の安定的収益化(在庫回転率の引き上げ)、資産の入れ替え、直接金融などによって、将来的に財務体質を向上させる必要があると思われる。同社は現状、こうした課題の解消に向けて動いているところである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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