C&R社 Research Memo(10):円安メリットを生かして海外ゲーム市場の開拓に注力
*17:10JST C&R社 Research Memo(10):円安メリットを生かして海外ゲーム市場の開拓に注力
■クリーク・アンド・リバー社<4763>の業績見通し
2. 事業セグメント別見通し
(1) クリエイティブ分野(日本)
クリエイティブ分野(日本)の売上高は前期比9.8%増の38,500百万円、営業利益は同11.2%増の3,200百万円と増収増益を見込む。TV/映像、ゲーム、Webなど主力分野を中心にプロフェッショナル人材のネットワークが順調に拡大しており、プロデュース及びエージェンシー事業の売上成長を見込む。「漫画LABO」などライツマネジメント事業については前期並みの水準を想定しているようだ。
主力分野では、ゲーム分野の海外展開が注目される。円安の進展によるコスト競争力を生かして、海外需要を取り込むべく2024年2月期に北米の展示会に出展するなど営業活動を本格的に開始しており、見込み顧客の目途も立ったことからカナダに支社を開設した(当面は日本から出張ベースで営業活動を行う予定)。海外パブリッシャーから見れば円安によって開発コストの低減につながるため、国内最大級の開発ネットワークを誇る同社に発注するメリットは大きい。ゲーム分野の2024年2月期の売上規模は約130億円でほぼ国内向けで占められるが、2025年2月期は海外向けで数億円の売上が見込まれており、将来的には海外売上を拡大したい考えで、今後の収益貢献が期待される。
また、市場拡大が見込まれるAI/DX分野を強化すべく、同社(DX分野)、リーディング・エッジ社、Idrasysと2024年3月に子会社化したリヴァイの4社で構成する「C&R AI/DXスタジオ」を開設した。リヴァイはAIに関する教育、コンサルティング事業などを行うベンチャーで、同社の知見を生かしながらAI/DX分野の人材育成を図り、売上拡大を目指す。具体的なサービスメニューとしては、AI/DX導入サポート、AI/DXに関するコンサルティング、AI/DXメディア事業、MA(Marketing Automation)運用支援などのサービスを4社のリソースを融合しながら展開していく。中堅・中小企業のニーズを掘り起こすべく、DX無料相談窓口「DXの森」のサービスも2024年3月より開始しており、新規顧客の獲得につなげていく考えだ。
(2) クリエイティブ分野(韓国)
クリエイティブ分野(韓国)の売上高は前期比7.1%減の3,300百万円、営業損失は40百万円(前期は41百万円の損失)を見込む。売上高はデジタルコミック等のコンテンツ事業が拡大するものの、TV局向け派遣事業の低迷により減収となる見通し。利益面では、コンテンツ事業の開発コスト負担により前期並みの損失を見込んでいる。コンテンツ事業はプラットフォーマーへの支払手数料率が高く損失が続いている状況にあるが、ヒット作品の創出や開発コスト低減により収益化を目指す。
(3) 医療分野
医療分野の売上高は前期比7.1%増の5,800百万円、営業利益は同8.2%増の1,400百万円を計画している。前期の減益要因となった新型コロナウイルスワクチン接種案件は既に収束しており、2025年2月期の業績へのマイナス影響はなく、常勤及び非常勤医師の紹介案件数増加により増収増益となる見通し。
2024年4月から順次施行される「医師の働き方改革」を目的とした改正医療法に備え、医師向け求人情報サイト「民間医局」に新機能を追加した。具体的には、スポット・定期非常勤の求人検索で、「宿日直許可あり※」「労働時間」での検索が可能となったほか、マイページで勤務予定や勤務時間実績を確認できるようにした。改正医療法によって医師の総労働時間の上限が定められるなか、労働可能なスポット・定期非常勤案件の検索が容易となり、紹介案件数の増加につながるものと期待される。
※ほとんど労働することがないような勤務に関して、労働基準監督署から医療機関に対して与える許可のこと。宿日直許可を取得している医療機関での勤務の場合、許可の範囲内はその勤務時間が労働時間に累計されないこと(労働時間規制が適用除外)となる。時間外・休日労働の上限規制が導入されるなか、宿日直許可はアルバイト探しの際に重要な情報となる。
なお、メディカル・プリンシプル社では機動的なサービスを展開するために、2023年11月に営業組織体制を支社別からサービス別に変更しており、一部構造改革費用を2025年2月期の計画に織り込んでいる。
(4) 会計・法曹分野
会計・法曹分野の売上高は前期比8.1%増の2,700百万円、営業利益は同16.8%増の200百万円を見込む。企業向けに会計士・弁護士などプロフェッショナル人材の紹介案件が伸長する見通し。
(5) その他事業
子会社で構成するその他事業については売上高で前期比37.0%増の5,000百万円、営業利益で50百万円(前期は200百万円の損失)を見込む。売上高については前期末に子会社化したShiftallが加わることで10億円強の増収要因となり、既存事業ベースでは1割程度の増収となる。利益ベースでは、前期まで損失計上していた子会社のうち9社で黒字化を見込むなど全般的に収益の改善を見込んでおり、蓋然性も高いようだ。なお、前期に大型プロモーション案件の期ズレが発生したforGiftも同案件だけで1億円程度の増益要因になると見られる。
なかでも注目されるのはVR Japanで、2023年2月期より順天堂大学と共同開発を進めていた「AR胸腔ドレナージ」の具体的な市場展開を検討している。当面は医師のトレーニング用機器として販売し、将来的には医療機器としての認証を取得し、医療現場での実用化を目指す。胸腔ドレナージとは、胸腔内にドレーン(管)を挿入することで、貯留した気体や液体(胸水や血液、膿)を体外に排出(ドレナージ)する治療法のことを指す。今回開発した製品によって、あらかじめ撮影したCT画像を、臓器、血管、神経の位置情報を立体的に把握するため3D画像データとして処理し、医師が装着しているARグラス上で患者の画像に重ね合わせることで、あたかも患者の体内を透視しているような環境下で、ドレーンチューブの胸腔内への安全な挿入が可能となる。ARデバイスにはShiftallの開発した機器を使用することも検討している。
また、Idrasysについては事業の軸を伸び悩んでいたAIサービスの開発・提供から、AI/DX関連の人材サービスへとシフトしており、今後は関連人材の育成並びにネットワークを拡大しながら事業成長を目指す。AI/DX分野についてはリーディング・エッジ社、リヴァイなどグループ会社とも協業しながら、市場を開拓していくことになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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