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オーバル Research Memo(6):アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニーを目指す(2)

2025年07月22日 13:06 銘柄/投資戦略

*13:06JST オーバル Research Memo(6):アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニーを目指す(2) ■中長期の成長戦略

2. 新中期経営計画達成に向けた成長戦略
オーバル<7727>の成長戦略の具体的な取り組み計画と実績は以下のとおりである。

(1) センサ事業成長戦略
センサ事業では、まず新製品・リニューアル製品の売上拡大に向けて、時代の流れに対応した主力製品のモデルチェンジと新たな市場へ新製品投入を行う。現在の主力製品はコリオリ流量計、容積流量計、渦流量計であるが、最近の実績として2025年3月期には超音波流量計「UC-1」をリリースしている。これは、「完全工事レス」をコンセプトに開発された液体用クランプオン形超音波流量計である。簡単・手軽に流量計測を行うことが可能であるため、工場や商業施設におけるユーティリティ流体(水、温水等の施設の稼働に不可欠な流体)の計測に最適だ。従来はコストや工事期間等の面から導入が困難であった枝管についても、隅々まで流量を可視化することで、水資源の使用状況を把握し、無駄の削減につなげることが可能となり、省エネ・脱炭素化への貢献につながることが期待できる。今後も新製品やモデルチェンジ製品を発表し、2028年3月期には、新製品・リニューアル製品の売上高を2025年3月期比30%増とする計画である。

また、センサ事業では水素・アンモニア関連事業の拡大を目指して、脱炭素社会の構築と代替エネルギーサプライチェーンに関連する製品・サービスの開発・提供に積極的投資・推進をする。2028年3月期には、水素・アンモニア計測向け製品の売上高を、2025年3月期比50%増とする計画である。

(2) サービス事業成長戦略
サービス事業では、水素・アンモニア関連事業の拡大を目指して、高精度で信頼性の高い水素計測流量計を供給するために、国内でも希少な水素実ガス校正設備を建設している。

同社では、これまで大流量の水素ガス流量計校正設備「OVAL H2 Lab」建設構想への対応を進めてきたが、いよいよ2026年3月期中に運用開始の予定となった。流量計の精度を左右するのが、「校正」と呼ばれる工程である。校正とは、実際に計測する流体(気体や液体)を流量計に流し、標準器との計測値のズレやバラつきをチェックする作業のことだ。この校正が徹底されていないと、正確な計測値を得られない恐れがある。同社は次世代エネルギー市場にリソースを傾注し、サプライチェーンの一翼を担って新たなビジネスチャンスとするとともに、脱炭素・カーボンニュートラルの実現といった持続可能な社会に貢献するため、水素計測流量計のクオリティ向上に注力している。完成後は自社製品の校正に加え、他社製品の校正も実施し、2027年3月期以降の業績貢献を見込んでいる。

(3) システム事業成長戦略
システム事業では、エネルギー安全保障への貢献に向けて、脱炭素社会への移行期間におけるエネルギー安定供給体制を確保するため石油類取引用システム提供を行う。エネルギー安全保障への貢献は、社会貢献にもつながる取り組みだ。そして、アジア市場の売上高(システム部門以外を含む全社合計)を、2025年3月期比15%増とする計画だ。そのために、シンガポールを中心に、東南アジア、中国、韓国、台湾のグループ会社連携強化による販路拡大を目指す。

システム事業においてアジアを束ねているOVAL ASIA PACIFIC PTE. LTD.(シンガポールの連結子会社)では、FPSO(Floating Production, Storage and Offloading system)やFSO(Floating Storage and Offloading system)と呼ばれる、洋上で石油・天然ガスを生産・貯蔵積出するための浮体式設備に用いる、石油類の取引用に使用される流量計測装置と流量校正装置を得意としており、これまで多数納入してきた経験と実績を生かす計画だ。

OVAL ASIA PACIFICの最近の実績としては、2025年4月にベトナムPTSC Asia Pacific より大口システム案件を受注したことを発表している。この受注は、これまで培った経験や実績などが評価された結果と考えられる。このように、同社グループでは、アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニーを目指すとともに、エネルギーの安定供給と安全保障にも貢献している。

(4) 新事業創出戦略
新事業創出では、自社保有技術を活用した新たな取り組みを行う。具体的には、社内ベンチャー制度を活用した新事業創設や流量計測以外の製品開発を通じて新たな市場を開拓することで、2028年3月期には新規事業売上高17億円の純増を目指す。

最近の実績としては、ケムシェルパ(含有化学物質調査)の調査代行事業がある。顧客のサプライヤと顧客の間に同社が入り、ケムシェルパのデータ授受管理を行うサービスだ。サプライヤへの依頼、データ確認・集計、回答書作成の業務から顧客を解放しつつ、提出用回答書を入手することができる。このサービスは社内ベンチャーから生まれた事業で、コンサル事業として応用している。

また、2025年6月より販売開始したスマート封印システム“Lock’n Lorry(R)”は、同社の顧客からの提案により生まれた派生商品である。同社の無線技術の活用によって、食品・飲料輸送用のローリー車のロックの状況をスマホで管理できるものである。これによって、プラスチック製結束バンドの不要化、タンク上部の高所作業の削減による安全性の向上、自動記録やペーパーレス化による作業効率及び作業信頼性の向上の効果を実現し、社会問題の解決に貢献するものである。

以上の成長戦略は、中期経営計画の経営目標達成の原動力となる重要な戦略であることから、弊社では今後の進捗状況を注視したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

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