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トレンダーズ Research Memo(8):美容マーケティング領域とメディカルマーケティング領域にリソースを集中

2024年07月23日 16:38 銘柄/投資戦略

*16:38JST トレンダーズ Research Memo(8):美容マーケティング領域とメディカルマーケティング領域にリソースを集中 ■トレンダーズ<6069>の今後の見通し

1. 2025年3月期業績の見通し
2025年3月期の業績は、売上高6,450百万円(前期比13.7%増)、営業利益1,000百万円(同26.8%増)、経常利益1,000百万円(同29.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益620百万円(同29.3%増)を見込んでいる。マーケティング事業では引き続き選択と集中を行い、美容カテゴリへ注力することで、売上高6,285百万円(同13.4%増)を計画している。美容マーケティング領域では、1ブランド当たりの受注額向上と取引ブランド数の拡大を図り、成長を確保する。粗利については売上高の増加率と同等を見込むうえ、販管費の増加率は前期と比較し緩やかになると想定している。なお、投資額は550百万円程度(前期は580百万円規模)になる見通しである。2024年2月に公表したアイスタイルとの資本業務提携の影響については、合理的な金額算定が困難なため業績予想には織り込んでいない。

同社は、美容マーケティング領域の成長戦略として、「1ブランド当たりの受注額の向上」と「取引ブランド数の拡大」を掲げている。1ブランド当たりの受注額の向上については、3点の施策を実施する。1点目はアイスタイルとの共同メニュー開発である。@cosmeとMimiTVの共同広告メニューを2024年3月に販売開始したが、7~9月の掲載メニューは既に完売するなど滑り出しは好調だ。今後もメニューの開発を継続的に進める。2点目はマーケティングメソッド・ソリューションの開発である。AIのディープラーニング・転移学習によりSNS投稿内容の熱量を測定する「熱量スコア」を開発し、CCCMKホールディングス(株)協力の下で実施した分析により、熱量スコアと購買データとの相関関係を明らかにする。3点目はプラットフォーム・流通との連携強化である。アイスタイルとの連携効果を各プラットフォームや流通業者との協業に生かす。一方で取引ブランド数の拡大については、アイスタイルとの連携に加え、MimiTVの認知拡大施策として2024年2月に初のリアルイベントを開催した。今後もリアル・オンラインの両面からイベントを継続的に実施する。アイスタイルの取引ブランドに対して同社のインフルエンサーマーケティングを提供するなど、インフルエンサーマーケティングのソリューション強化を図る。

メディカルマーケティング領域では、再生医療(毛髪再生)と医療アートメイクに特化する方針である。2023年10月に開院したアートメイククリニック「ars clinic TOKYO/GINZAMaison」は、韓国のアートメイクサロンと事業提携しており、開院7ヶ月で症例数が1,300件を突破した。一方、同社は再生医療領域でレプリテックと業務提携している。2024年2月には毛髪再生メニューを開発し、2025年3月期に本格提供を開始する。これらに対し、同社はSNS広告運用やWebサイト開発、オンライン予約システム導入などのマーケティング・運営DX支援を実施することや、クリニック専売品の開発・販売を行う。当面の目標は、2026年3月期にクリニックとの間で売上収益の分配を開始することである。2023年3月期から2025年3月期を投資期間と位置付け、将来の収益分配の増大につなげる。

インベストメント事業は売上高165百万円(前期比27.9%増)を見込んでいる。毎四半期の社債の受取利息による収入のほか、営業投資有価証券の売却1件を予定している。社債については、引き続き期間のリスクを考慮して流動性を意識した運用を実施し、得た利益をマーケティング事業に投資する考えである。

2. 中期経営計画
同社は、前中期経営計画(2022年3月期〜2024年3月期)で営業利益目標10億円を1期前倒しで達成したことから、2023年5月に新たな中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)を発表した。2024年3月期より選択と集中を行い、マーケティング事業において「美容マーケティング」と「メディカルマーケティング」の2つの領域を核として、2026年3月期に営業利益20億円を目指している。2025年3月期以降のインベストメント事業については、収益が発生する見込みではあるものの、中期経営目標には含めていない。

美容カテゴリのうち、美容マーケティング領域では、広告費の配分が高まるインターネット広告市場で、SNSの影響力を最大限に活用し、インフルエンサーマーケティングを推進する。SNSが消費者の購買行動へ及ぼす影響は大きく、同社の顧客の大半が属する化粧品業界の広告費の配分は、TVCM・雑誌広告からWebメディア、インフルエンサー・SNS広告へとシフトが急速に進んでいる。一方、食品・飲料・情報・通信など美容以外のカテゴリではSNSマーケティングの需要が美容ほど強くないため、需要が好調に推移している美容カテゴリのSNSマーケティング支援に集中し、競合優位性をさらに強化することで、1ブランド当たりの受注額の向上と取引ブランド数の拡大を図り、効率的な成長を確保する戦略である。2026年3月期に売上高7,680百万円、営業利益1,900百万円を計画しており、美容カテゴリの2026年3月期に向けてのネット売上CAGRは20%の安定成長を目指している。具体的には、メーカー担当者、流通・広告代理店関係者などへのMimiTVの認知度を上げながら、アイテム別ではメイクアップ、販路別では百貨店カテゴリの取引ブランド数の拡充を図る。また、美容マーケティングメソッドの開発及びSNS分析・プランニング力を強化するとともに、SNSプラットフォームのトレンドを捉えたソリューションを開発することで、同社の強みである企画段階から実行までの統合的なサービスを展開し、1ブランド当たりの受注額を向上させる。さらにアイスタイルとの資本業務提携により、それぞれが有する強みを生かした協業を推進する。ブランド支援における両社のビジネスモデルの相互補完性は高く、たとえば同社が運営するMimiTVはいわゆる美容オタクを対象としているのに対し、アイスタイルが運営する@cosmeは美容オタクからマス層を対象とする。また、MimiTVが早期の話題醸成を得意とするのに対し、@cosmeは長期的な話題化を得意とする。今後は、MimiTVでSNSでの話題を醸成し、認知拡大した商品を@cosmeを使って育成し、ファン層を構築するといった役割分担でのマーケットシェア拡大が期待される。さらに、両社の補完性は顧客企業への企画提案においても強力な武器になりそうだ。たとえば、顧客企業が新ブランドや新製品をリリースする際、SNSでの事前の話題化や発売直後の盛り上げ、認知拡大にはMimiTVの情報発信力が威力を発揮するであろうし、その後の消費者への浸透には@cosmeが効果を発揮するであろう。このようなトータルな企画提案力の向上は、顧客企業にとっても大きな魅力になるはずだ。これ以外にも双方の顧客へのクロスセルやアップセルなど、両社の協業による顧客企業への影響力は高まると弊社では見ている。

同社が第2の柱としているメディカルマーケティング領域では、拡大する美容医療市場における美容クリニックに対し、レベニューシェアという形で、SNS広告運用、Webサイト開発、オンライン予約システムの導入などのマーケティング・運営DX支援を実施する。また、美容クリニック100院以上との取引実績を基盤に、クリニック専売化粧品などの開発・販売を強化する。マーケティング・運営DXは、毛髪再生と医療アートメイクに特化する。2025年3月期は引き続き積極的に事業への投資を行う時期と位置付け、2026年3月期からの収益化(クリニックから収益分配を受ける)を目指す。レベニューシェアに至るまでは投資が先行するが、2026年3月期には売上高750百万円、営業利益100百万円を計画している。

2024年3月期及び2025年3月期は、中期経営目標達成に向けた投資期と位置付け、2領域に積極的な投資を行う。美容マーケティング領域では、MimiTVの認知拡大施策に4.3億円(2期合計)、人材採用・育成に2億円(同)、メディカルマーケティング領域では、マーケティング・運営DX支援体制の構築に3.5億円(同)、メディア開発に1.5億円(同)を計画している。

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)

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