大石産業:1925年創業の包装資材メーカー、PBR0.5倍台かつ配当利回り3%超え
*11:31JST 大石産業:1925年創業の包装資材メーカー、PBR0.5倍台かつ配当利回り3%超え
大石産業<3943>は1925年創業の包装資材メーカーで、消費者の生活や物流に欠かせない高品質な製品を提供している。2025年4月に創業100周年を迎えた。日本全国に営業・生産拠点を保有し、国内のお客様のニーズに迅速に応える体制を構築し、マレーシアにも営業・生産拠点・その他事業を展開。食品や工業製品など幅広い顧客に対して包装資材を提供し、製造・販売に加えて循環型社会を見据えた回収・再利用の仕組みを組み込んでいる。
事業は「緩衝機能材事業」と「包装機能材事業」の2本柱に大別される。緩衝機能材は、パルプモウルド(鶏卵・青果物・工業用トレー)、段ボール、樹脂成型品などを提供しており、2025年3月期には全社売上の47%を占める。包装機能材は、ポリスチレンフィルム、自動車向けキャストフィルム、国内外向け重包装袋などで、売上の51%を占める。残りの「その他」には不動産賃貸や海外での農産物輸入販売などが含まれるが規模は小さい。同社パルプモウルド製品および食品トレー用ポリスチレンフィルムは、日本国内においてトップシェアを誇っている。同社は「包む」機能の枠を超え、顧客の物流効率や環境対応をサポートする「ソリューション提供型企業」への進化を志向している。
同社はパルプモウルド、段ボール、フィルム、重包装袋の4つの製品事業を有する日本で唯一の製造・販売メーカーとなる。それぞれの事業が有するメリットを活かしつつ、各製品事業が連携した提案を行っているほか、宙吊り式イチゴ包装「ゆりかーご」は同社の特許製品であり、柔らかいフィルムでイチゴ形状にぴったりフィットし、軟弱果実であるイチゴを守っている。同社の強みは第一に、事業ポートフォリオのバランスにある。国内シェアNo.1のパルプモウルドに加え段ボールが安定需要を下支えする一方で、フィルムや重包装袋が自動車・化学・食品といった多様な産業展開により、景気変動の影響を分散させている。特にパルプモウルドはSDGs対応製品として開発強化が進められており、循環型社会に貢献する素材として独自の強みを発揮している。第二に、独立系の重包装袋メーカーとして海外展開力を持つ点が挙げられる。国内では大手化学メーカーを中心に安定した取引基盤を築き、海外でも食品や樹脂用途に販路を広げてきた。さらに100周年を契機に打ち出したグループビジョン「未来を包む - Inclusion for Future -」は、循環型社会に最適解を提供するという理念を明確化し、顧客との信頼関係を深める基盤となっている。これらの強みに加え、積極的な設備投資による生産体制の強化と、新製品開発力が競合との差別化を支えている。
2026年3月期第1四半期の連結業績は、売上高5,948百万円(前年同期比3.9%増)、営業利益262百万円(同33.5%増)と増収増益を確保した。背景にはパルプモウルドや段ボールの需要増加と販売価格修正効果がある。セグメント別では、緩衝機能材事業が好調で、パルプモウルドは鶏卵・青果物向けで販売数量が増加し、工業用トレーも堅調に推移した。段ボールは農業・工業向けともに増販で収益に寄与。一方、包装機能材事業は減収減益で着地しており、フィルム部門で食品容器用ポリスチレンフィルムの販売数量が前年並みとなったが、自動車向けキャストフィルムが販売数量減となった。また、海外の重包装袋需要減が響いた。通期計画は売上高24,232百万円(前期比3.2%増)、営業利益901百万円(同0.4%減)とされ、前期比で営業利益は横ばい見通しながらも増収を継続する計画である。
市場環境を見ると、国内は物流・食品分野を中心に包装需要の安定が見込まれる一方、原材料やエネルギー価格の変動リスクが依然として存在する。国際的には米中経済の減速や地政学リスクが需要に影響を与える可能性がある。しかし、循環型社会や脱炭素の潮流は中長期的な追い風となり、特にプラスチック削減やリサイクル製品の需要拡大は、同社が注力するパルプモウルド製品や高付加価値包装資材に成長機会をもたらす可能性もある。
今後の見通しについて、第8次中期経営計画「New Challenge 2027」では、2028年3月期に売上高250億円・経常利益15億円を目標としている。これは2035年に売上高300億円・経常利益20億円を掲げる長期ビジョン「New Challenge Vision 2035」への布石と位置づけられる。緩衝機能材事業でパルプモウルドの生産力強化・新製品開発と、段ボールの収益性改善・生産体制強化を進めるとともに、全事業でDX活用による省人化・効率化を推進していく。包装機能材事業では、フィルムで技術開発による新規事業創出に取り組み、重包装袋では環境配慮型製品の訴求によりグループ全体で事業拡大を目指していく。重点施策としては、(1)パルプモウルドの生産力強化と新製品開発による業界No.1地位の拡大、(2)段ボールの収益性改善と生産体制強化、(3)フィルムの新分野開拓(電材向けなど)、(4)重包装袋における海外拠点との連携強化、が挙げられる。また、人的資本投資やDX活用も経営基盤強化の柱とされ、持続的な収益力向上につなげる方針が示されている。
株主還元については、生産性の向上等による利益体質強化を図りながら、将来の事業展開に備えた内部留保を確保しつつ、DOE2.0%以上を目安に安定的な配当を実施している。また、保有株式数に応じた株主優待制度・長期保有優遇制度として、QUOカードを進呈している。同社はPBR0.5倍台で推移する中、1倍割れ改善に向けて事業戦略・財務戦略・IR戦略と企業価値向上に向けて取り組んでいる。ROE目標8%を掲げる中、PBR0.58倍・配当利回り3%水準で推移する同社の持続的な成長には注目しておきたい。
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