電算システムHD Research Memo(10):長期計画のゴールに向けた最終の3ヶ年計画を策定
*13:10JST 電算システムHD Research Memo(10):長期計画のゴールに向けた最終の3ヶ年計画を策定
■成長戦略
1. 長期計画「Challenge1000」
電算システムホールディングス<4072>は長期計画として「Challenge1000」を掲げ、ESG、SDGsの要素を加味しながら、2027年12月期に売上高1,000億円を目指している。これまで培った情報処理に関するノウハウと、IT技術とサービスを組み合わせることで生まれる「新しい価値の創造」を、「情報サービス事業」「決済サービス事業」「クラウドサービス事業」「新規事業」の4つの事業を通じて実現していく。
2. 3ヶ年計画
同社は、中期計画として3ヶ年計画(2025年12月期~2027年12月期)を策定し、2027年12月期に売上高815億円(情報サービス事業:530億円、収納代行サービス事業:284億円)の目標を設定した。本中期計画は長期計画「Challenge1000」に向けた最終の3ヶ年に当たるが、本中期計画の2027年12月期の目標を達成したとしても長期計画で掲げた売上高1,000億円には未達となる。しかし、同社では長期計画の目標は変更せず、引き続きチャレンジする方針だ。同社は、この3ヶ年を「新規事業の創出、他社との連携、M&Aなどにより計画以上の成長を目指す」期間と位置付け、売上高は毎期10%以上の増加、営業利益は毎期の伸び率の平均を34.9%とする高い水準を掲げている。利益面で特に高い目標を掲げる理由として、「資本コストや株価を意識した経営の実現」に向け、株主価値を創造しているかの判断基準となるエクイティ・スプレッドのプラス維持への対応が挙げられる。同社の2024年12月期の実績として、ROE(自己資本比率)は8.7%、株主資本コスト(株主が企業に要求する最低限の収益率)は6.3%で、前者から後者を差し引いたエクイティ・スプレッドは2.4%とプラスとなっている。ただし直近5ヶ年のROEの平均値は11.58%となるほか、継続的に企業価値を高めるべく、目標数値としてROE12%をKPIとした。収益力のさらなる強化と、財務・資本政策を含む資本コストの改善により、エクイティ・スプレッドの継続的なプラス維持で株主の期待に応える。
中期計画の達成に向けて、「DSK Transformation」「グループ企業間の連携強化」「隣地拡大」「人財育成」を掲げている。「DSK Transformation」では、ストック比率について業績指標を「ストック収益の増加率」に変更した。理由は、適正な評価に向け製品売上拡大等による業績の一時的変動からの影響を回避するためである。売上のほとんどがストック収益となる収納代行サービス事業は、単価への価格転嫁が進み、営業利益率は足元で11%水準を継続することから、伸び悩む売上高が課題となる。改善策として推進する「PAYSLE」「TREE PAYMENT」のほか、増加する請求書のオンライン化需要がカギを握るだろう。情報サービス事業は、技術人材や外注コストのほか、大型案件の収益インパクトが大きく、業績変動を避けるためストック収益の増加は急務なことから、受託開発に加えパッケージ開発に注力しており、2025年12月期中間期は、AI関連で「Google Agentspace支援パッケージ」を2種リリースし、その需要を押し上げる「Reckonerとの連携サービス」も開始した。顧客ニーズを機敏に捉えた伴走するサービス提供により、収益貢献に期待したい。
「グループ企業間の連携強化」では、グループ全体の営業推進を担う「営業推進室」を新設し組織にとらわれない営業活動で同社の技術的優位性を顧客に訴求しシナジーを最大化する。営業力強化に向け、トップダウンでバリューセリング研修※の定着化を図っており、全社横断で技術的理解を深めマルチに提案活動可能な営業人材を育成する。
※ 単なる売り手と買い手という関係から脱却し、顧客企業にとっての新たなビジョン、戦略、構造、プロセス、バリュー(価値)を共有し長期にわたって継続する関係を構築すること。
「隣地拡大」については、「共創エコシステム企画室」を新設し、web3、ブロックチェーン技術を活用した決済サービスの企画を推進する。収納代行サービス事業と情報サービス事業の垣根を超えて知見を共有し、2025年8月に動き出したJPYC等との協業による「ステーブルコイン決済送金インフラの構築」を進める。ほかにも他社との協業として、前述のERP Cloud 360 コンソーシアムでの各分野専門企業との協業に期待がかかる。「人材育成」に関しては、特に長期化の見込まれる大型案件では、コスト削減の観点から高品質かつ早期稼働は喫緊の課題で、その源泉となる人材のスキル向上は必須となり、技術人材の強化を図っている。Googleはもちろん、AWSやMicrosoft等のクラウド系ベンダーが提供する資格の取得を推奨しており、取得時に授与する褒章を足元約2年で数倍規模に増額した。その効果もあり、Googleに加えAWS関連での有資格者が増加し、技術人材の充実が進んでいる。加えて、全社を挙げて講習会等スキルアップイベントを開催して切磋琢磨の機会をつくり、人材のモチベーション向上に尽力している。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
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