RIZAP-G Research Memo(5):独自のDXや無人運営エコシステムが特徴の「chocoZAP」(2)
*16:05JST RIZAP-G Research Memo(5):独自のDXや無人運営エコシステムが特徴の「chocoZAP」(2)
■RIZAPグループ<2928>のchocoZAP事業
3. 店舗品質・顧客満足度向上策を推進中
2025年3月期は既存会員の満足度向上を推進したが、その成果が顕在化してきた。chocoZAPはサブスクリプション方式であるため、会員数の増加に伴い、退会率を一定以内に抑制する重要度が高まる宿命にあり、会員の満足度向上は不可欠である。同社が打ち出す方向性は“人×DXの最適化”であり、具体的には、ちょこっとサポート導入(トレーナー配置)、コンシェルジュ導入(コールセンター)、清掃の強化、サポート会員制度(後述)、ちょこっとメンテナンスなど社員によるメンテナンス等である。ちょこっとサポートは、プランづくりやアプリの使用方法、運動や食事のアドバイス、マシンメンテナンスや清掃など多様な役割を担うRIZAPトレーナーを巡回させる取り組みである。スターターキットの手渡し、マシン・サービス利用案内等により新規会員の不安解消に役立っている。chocoZAP見学・体験にも対応し、会員獲得にも一役買う。2025年5月には、品質管理担当の役割を担う「ちょこっとメンテナンス」人材を180名登用し、自社車両68台による定期巡回を行うとともに、それまで「ちょこっとサポート」が行っていた設備修理業務やサポート会員のフォローを行うなど、品質向上の取り組みを包括的に実践する体制に進化させた。
故障・不具合対応では、QRコードを用いた故障状況の即時把握を全店で導入したため早期把握を実現し、社内外の人材を活用したメンテナンス体制を整備することでフィットネスマシン故障率を約4%改善させた。マシン故障対応に関しては、サポートセンターの設置(2022年7月〜)、故障カード導入(2023年9月〜)、チェックシート導入(2023年11月〜)など段階的に対応を強化してきた。2024年12月に導入されたのが、「お店の状況わかるナビ!」及び「QRコード導入」である。「お店の状況わかるナビ!」は全店舗のマシンの故障・対応状況、清掃状況、備品補充状況などが一覧できるWebページである。「QRコード導入」は各マシンに貼られたQRコードから誰でもすぐにスマホで連絡が可能であり、修理完了予定日もひと目で分かる。これらにより全国の店舗からマシンの故障状況や各種不具合等、顧客の声が即時に届く体制が整った。修繕・メンテナンス実務に関しては、ちょこっとメンテナンス(社員)やセルフメンテナンス会員制度などを活用して迅速に対応できるマンパワーを確保した。また、660項目に及ぶマニュアルを整備し専門業者並みの作業品質に近づけた。これらの結果として、故障率は6.1%(2024年11月末)から約4%改善し、1.8%(2025年5月時点)まで低減した。
清掃に関しては、清掃頻度1店舗当たり週16回が実現し大幅にサービスレベルが向上、顧客の評価も向上している。清掃業務・備品補充業務の主役となるのは、約4万人のフレンドリー会員である。同社では清掃箇所や完了報告などが簡易にできるアプリを導入し、フレンドリー会員が働きやすい仕組みを整備した。
4. ヘルステックのフル活用
chocoZAPの急成長の要因として、ヘルステックの活用が不可欠である。chocoZAPアプリは、入退会、日々の入退館、混雑情報の確認、ライフログ・顧客特性からAIが最適な運動を提案、おすすめ動画の配信、継続を支えるゲーム機能(くじ引きなど)、顧客同士のコミュニティ機能などで不可欠な存在となっている。また、各店舗に平均10台設置された監視カメラ映像をAIが解析し、「不審な行為」や「転倒」を検知した場合には、適切な対処を遅延なく行える体制が整っており、無人店舗のセキュリティ確保に大きく貢献している。また、体組成計、ヘルスウォッチ、様々な新規アプリによるライフログの蓄積は顧客サービスにおいて重要な役割を果たしている。
同社は2022年6月にDX専門子会社であるRIZAPテクノロジーズ(株)を新設した。Web・UIUXデザイナー、デジタルマーケター、データアナリスト、エンジニアなどのDX人財を積極的に採用し、育成している。現在では、同社のDX人財は総勢130名超となり、ヘルステック企業としてだけでも大手に位置付けられることになる。内製化率100%となったことでナレッジ資産蓄積や開発速度の向上が成果として顕在化する。筋トレやトレーニングジムの業界にはない発想と専門性で、chocoZAP事業の集客や満足度向上に貢献している。
5. 大きな出店ポテンシャル
chocoZAPは大都市を中心に出店を加速し、現在では地方都市を含む全国に店舗網を広げ、2025年5月15日現在で1,799店舗に拡大した。都心部でのchocoZAPは、1~2km圏内に一定以上の人口があれば成立する小商圏ビジネスモデルである(コンビニエンスストアの商圏は500m前後と言われている)。また、地方都市への拡大中であり、2024年12月末時点では、既設店舗の72.6%が大都市店舗(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、京都府、福岡県)であるのに対し、27.4%はそれ以外の地方都市の店舗であり、地方都市の店舗の比率は大きく上昇している。店舗当たりの会員数では大都市店舗を下回るものの、固定費を安く抑えられることで十分収益性が成り立つ。また、過疎地での店舗展開も実験的に行っており、人口密度(100人/km2以下)や周辺人口(店舗の500m圏内店舗周辺人口:500人以下)などの条件が不利で当初は考えられなかった地域でも採算がとれることがわかってきた。
新たな立地タイプ・店舗タイプの可能性も見えてきている。洗濯・乾燥機のみ、カラオケのみなど機能を絞った店舗、高速道路店舗(「chocoZAP日本平PA(上り、E1東名高速道路)」など)、ホテル内立地(「chocoZAPホテル信濃路店」)、空港内店舗(阿蘇くまもと空港内)などである。さらに、大きなポテンシャルを秘めるのが、企業内出店である。2024年10月に同社は、初の単独企業内出店として「chocoZAPクボタ グローバル技術研究所店」をオープンした。国内企業の94.2%※は、福利厚生にフィットネス関連補助を未導入である。一方で、フィットネス補助をいち早く導入した企業では、働きやすさの評価が上がり、業績の向上が見込まれるという調査結果もある。上記事例では、chocoZAP導入により社内コミュニケーションの向上に好影響があったという評価もあった。
※ 経済産業省委託事業「令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業(国内外での健康経営の普及促進に係る調査)報告書」(2023年3月24日)による。
これらの実績及び検証から、同社では、国内のchocoZAPの出店ポテンシャルを、6,000店舗以上と想定している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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