ローランド Research Memo(7):利益増を伴う「質の高い成長」により、企業価値の拡大を目指す(2)
*13:47JST ローランド Research Memo(7):利益増を伴う「質の高い成長」により、企業価値の拡大を目指す(2)
■ローランド<7944>の中期経営計画
(3) LTV向上
「Roland Cloud」を生涯顧客を生み出す仕掛けとし、「いつでも、どこでも、誰でも」楽しめる、パーソナライズされた体験サービスを拡充することで、LTVの向上を目指す。中期経営計画では、2025年12月期のサブスクリプション登録者数50,000人、サブスクリプション登録者数と年度内の単品購入者数の合計200,000人を目標としている。また、「Roland Platform」では、顧客データの一元化、データの見える化、データによって得られた深い顧客理解に基づく製品やサービスの充実、顧客とのコミュニケーションの向上、のサイクルにより、LTVの向上を目指す。中期経営計画では、2025年12月期のRoland Account340万人(2022年12月期は230万人)を目指している。このほか、アーティストやインフルエンサーとの関係強化、デジタルソーシャルメディアコンテンツを充実させ、ターゲティング広告とイベントによりストーリーを拡散することで、ブランド認知度の向上を図る。一方で、同社は創業以来のポリシーとして、ミュージシャンと宣伝を目的とした製品使用に関するエンドース契約を結ばないことを基本方針としている。ミュージシャンが自ら手に取り選ばれるような製品を開発することで、製品価値が自然と高まることに加え、同社製品を好んで使っているミュージシャンをサポートすることで、同社とミュージシャンの間でより強固な信頼関係が築かれていると弊社では見ている。
(4) 基盤強化
グローバル人事として、全世界統一人事システムによる人材の最適配置や、株式報酬制度のグローバル展開、従業員のエンゲージメントと生産性スコアの向上に努める。基盤強化としては、ビジネスのさらなる拡大に向けて基幹システムを更新するほか、事業所再編による生産性向上、エンゲージメント強化、イノベーションの加速に注力する。基幹システムについては、ERPのアップデートや、生産管理システムの入れ替えを予定しており、将来の成長に向けた基礎的な投資を進める。また、事業所再編には、本社リニューアルが含まれており、新本社社屋は2024年8月の着工、2025年内の竣工を予定している。
サプライチェーンの高度化については、部材の早期確保と共通化により販売機会ロスの低減を図る。また、販売チャネルに適した物流プロセスを構築しリードタイムを短縮する。加えて、オートメーション化の推進や新システムの導入によりアジリティを強化する。具体的には、マレーシア工場とグローバルHUB倉庫のさらなる強化や生産拠点の拡大を進める。Drum Workshop, Inc.とは、生産拠点の相互活用や、アコースティック・ドラムの生産技術を同社の電子楽器生産技術と融合させることで、生産能力及び生産技術の向上を目指す。そのほか、主力製品での半製品の共通化や、自動化・機械化のさらなる推進、外注工程の内製化を進め、利益改善を図る。
2. サステナビリティの取り組み
同社の事業は、音楽・映像文化を通じて社会の持続的発展に貢献する一方で、環境や社会全体の安定と豊かさのもとに成り立っていると認識している。そのため、環境・社会の安定や持続性が損なわれ、音楽・映像文化や同社事業が存続しえなくなる負の連鎖を避けるため、事業と環境・社会の相互の持続可能性を高め合う好循環を生み出す活動を、経営の重要課題に位置付けている。SDGsで掲げる17の目標に対しては「サプライチェーン・マネジメントの高度化」「音楽・映像文化の発展支援」「人材の活力、能力発揮の最大化」「成長(無形資産)への投資」「ガバナンスのたゆみない強化」を重要課題とし、中期経営計画における重点施策として取り組んでいる。
女性活躍の推進については、女性エンジニアの採用や女性管理職の登用など、女性活躍推進に取り組みつつ、「ワークライフバランス」を強化させるための取り組みを行っている。また、女性管理職の比率については、同社が公表している「女性活躍推進に基づく行動計画」で、日本の女性管理職比率を2021年時点の6%から2025年末までに倍の12%にする目標を設定している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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