ジェイ・エス・ビー Research Memo(7):業務改革と組織改革により目標達成を目指す(2)
*13:07JST ジェイ・エス・ビー Research Memo(7):業務改革と組織改革により目標達成を目指す(2)
■ジェイ・エス・ビー<3480>の中長期の成長戦略
3. 事業戦略
(1) 不動産賃貸管理事業
不動産賃貸管理事業の事業戦略では、業務改革と組織改革を最重要課題としている。そして、人間性とテクノロジーの融合、環境配慮型学生マンションの展開、リノベーション事業の確立、海外市場調査、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の組成を推進する。学生マンション事業における同社の強みである「企画・開発・提案力」「募集力」「サービス・管理力」の「三位一体」による一気通貫サポート体制を生かし、企画開発・賃貸・メンテナンス及び食事をはじめとする入居中サービスのそれぞれにおいて顧客基盤の拡大やサービス拡充を図る。そして入居者やオーナーをはじめとした社外各方面との関係性強化を通じ、持続的成長の実現を目指す。
事業戦略目標の実現に向けて、企画・賃貸・メンテナンスの一連の業務において、次のような施策を推進している。
まず、企画部門では、食事付き学生マンションの積極的展開を計画する。特に2025年2月完成予定の「学生会館Uni E’meal和歌山大学前(仮称)」は、和歌山県への初進出になる。また、2025年3月完成予定の「学生会館 フィリアK綱島」は、川崎信用金庫支店の建物内に併設する初の併設型である。2025年10月期には、物件管理戸数の前期比4,500戸増を想定し、エリア別には東日本エリア1,500戸増、西日本エリア1,500戸増、中日本エリア1,200戸増、北日本エリア300戸増を計画している。
賃貸部門では、契約事務センターの設立、店舗営業時間の見直し、電子契約促進などに取り組む。契約事務センターの設立では、契約書類を各店舗・支社から個別に発送していた従来の方式から、一部エリアでは契約事務センターから発送することで各店舗がコア業務に専念できる環境を整える。店舗営業時間の見直しでは、10:00~18:45の営業時間を10:00~17:00に短縮することで、スタッフのワークライフバランス向上とサービス品質・生産性向上を図る。更新契約の電子契約促進では、満期対象者の電子契約率を2024年10月期の約13%から2025年10月期には約32%に拡大する計画で、これによりコスト削減、業務効率化、サービス品質向上を実現する計画である。
メンテナンス部門では、アプリ導入、入居者サポーター制度の準備、フードロス削減、ゴミ削減などに取り組む。アプリ導入では、2024年4月より入居者向けに利便性の高い「住まいサポートアプリtotono」を導入している。入居者サポーター制度では、マンション入居者への軽作業代行を試験的に運用開始した。フードロス削減では、全国の食事付き学生マンションから、欠食率等フードロス削減に活用できるデータを収集・分析し、フードロスを削減する。ゴミ削減では、生ゴミ処理機の設置を順次拡大することで、廃棄物処理にかかる手間・時間・コストの削減を図る。
(2) 新規事業
新規事業の戦略目標としては、若者成長支援サービス事業モデルの確立、全国へのHR(人材)サービスの提供開始、新ブランド創出によるビジネスサイクルの補完(現在の幼児教室だけでなく、対象を小・中学生から大学卒業後まで拡大する)などを掲げる。
具体的には、日本社会の重要インフラとしての「新価値創造 学生マンション」を目指して、UniLifeのブランド認知度拡大及びブランドイメージ向上を目指す。幼少期から大学生まで、本人や親に向けた事業展開によって、基幹ブランドのUniLifeをより早く、より近くに感じられる施策を展開する。また、UniLifeでしか提供できない顧客体験価値(CX)の提供を図る。多くの体験や学びの場など、他とは一線を画す独自ソフトの提供を目指す。このほかにも社会的価値が高い人材の育成を図る。社会を一変させるような出来事に相対しても、新しい社会において活躍できる本質的人間力を持った人材、高度IT社会においても第一線で活躍できる人材の育成を目指す。こうした新規事業分野における各取り組みと、主力の学生マンションや入居者とのつながりによって、同社グループ全体としてのシナジーを追求する計画だ。
直近の事例では、福岡大学では経済学部専門科目「ベンチャー起業論」へ参画している。学生が企業と共同で、企業の課題解決に取り組む科目だ。また、武蔵野大学ではアントレプレナーシップ学部の教育寮を食事付き学生マンション内に開設した。これは、大学側からの学生マンションの一部を教育寮として使いたいとの申し入れを受けたものである。
以上のように、同社グループは中期経営計画「GT02」に意欲的に取り組んでいる。同社グループの経営環境は、長期的には今後も成長機会に恵まれ、成長戦略に対する少子高齢化進展の影響も限定的であると考えられる。学生マンション市場については、4年制大学のうち特に女子学生の増加が顕著であること、国の政策サポートにより留学生も増加を続ける見通しであることなどから学生マンションの供給は不足しており、一般マンションでは提供できない「安心感」「サービス」という強みが世の中に浸透するに伴って、同市場は今後も拡大傾向を続けると予想される。
また同社グループは、学生マンション業界のパイオニアとして高い知名度や信頼を築いている。今後も学生マンション供給不足が続くと予想されるなか、成長余地は大きいと言えるだろう。弊社では、今後の事業環境変化を見据えた中期経営計画の推進により、同社グループのさらなる成長が可能であると考える。引き続き、中期経営計画の進捗状況に注目したい。
4. ESGへの取り組み
同社では、「豊かな生活空間の創造」を経営理念として掲げており、ESGにも積極的に取り組んでいる。環境(Environment)では、リユース文化醸成・環境問題への取り組みを行い、不要になった古着の回収・再利用、JCLP(日本気候リーダーズパートナーシップ)へ賛助会員として加盟、環境影響を管理するためのグローバルな情報開示ステムを運営するCDPへの気候変動質問書に対する回答書の提出などを行っている。社会(Social)では、学生支援・地域支援への取り組みとして、京都市の産学連携実装化プロジェクトへの寄付、高知大学が行う「学び創造事業」の応援、Uni E’meal広大北においては、防災倉庫(みんなの防災倉庫)の設置などを行っている。ガバナンス(Governance)では、企業価値最大化に向けて、取締役会の実効性に関する評価の実施を開始している。このように、同社グループは業績拡大を目指すだけでなく、ESGにも積極的に取り組んでいる。欧州投資家を中心に世界的に企業のESGへの取り組みを考慮した投資が拡大しており、我が国でも近年はESG投資が急拡大していることから、同社の取り組みが注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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