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日鉄ソリューションズ:高付加価値戦略とビジネスモデル転換で加速する持続的成長

2025年08月28日 15:05 銘柄/投資戦略

*15:05JST 日鉄ソリューションズ:高付加価値戦略とビジネスモデル転換で加速する持続的成長 日鉄ソリューションズ<2327>は、システムインテグレーション(SI)、ITサービス、コンサルティングを提供する国内有力のICT企業である。顧客業種は産業・鉄鋼、流通・プラットフォーマー、金融、官公庁・教育など多岐にわたり、売上構成はビジネスソリューション約60%、コンサルティング&デジタルサービス約24%、グループ会社約16%が目安である。顧客業種別では産業・鉄鋼28%、流通・プラットフォーマー19%、金融14%が主力分野を占める。
競合優位性は、第一に技術力と業務知見の深さである。同社は「技術力の高さ&業務知見、顧客業務への精通」を価値の中核に置く。価格設定も「付加価値へのプライシング」を徹底し、顧客のKPI(例:コスト削減)に連動して対価を設計する方針を、時間をかけてシフトしてきた。さらに取引の深耕を重視し、「売上のトップ50で6~7割」という顧客集中の中でウォレットシェアを拡大してきた点は、参入障壁として機能する。競合は案件別に富士通<6702>、NEC<6701>など大手SIerが意識されるものの、同社は製造・鉄鋼起源の業務深耕やOracle関連の大型案件遂行実績、ネットワーク・インフラの提供力といった総合力で差別化している。
2026年3月期第1四半期の売上収益は82,684百万円(前年同期比7.6%増)、営業利益は8,485百万円(同3.7%減)で着地。産業・鉄鋼分野では化学・産機向け案件が好調に推移し、日本製鉄向けの新設備立上げやDX関連需要も寄与した。流通・プラットフォーマー分野では小売業向けを中心に増収、ITインフラ・ソリューション分野もクラウドやネットワーク刷新案件の増加が業績を押し上げた。金融分野は前年の大型Oracle関連案件の反動減があったものの、トレーディングや外為システムなどの専門性の高い領域で安定的な案件受注が続いた。全体として、付加価値に応じた価格設定の浸透や受注積み上がり、粗利率改善の取り組みが奏功している。2026年3月期通期の売上収益は357,000百万円(前期比5.5%増)、営業利益は43,000百万円(同11.7%増)を見込んでいる。ウクライナ情勢の長期化や中東の地政学リスク、中国経済の減速、米国の政策動向、円安など外部環境は依然として不透明だが、クラウドやセキュリティ、ネットワーク刷新、製造業の基幹システム更新などの分野で安定した需要を確保している。
同社は2024年に、2030年までの中期経営計画「NSSOL 2030」を策定し、20254-2027年を飛躍的な利益成長の基盤づくりのための3ヶ年として位置付けている。今後は、産業・鉄鋼分野における製造業全般の需要回復や日本製鉄の投資計画に加え、コンサルティング&デジタルサービス分野でのアプリ近代化やプロダクト販売拡大を成長ドライバーとする方針だ。特に、プロダクトや再利用可能なアセットを活用する「アセット型ビジネスモデル」の比率を2027年度に25%程度まで高める計画であり、これにより高収益体質への転換が加速すると見込まれる。最終年度の2027年3月期には、売上高4,500億円、営業利益600億円、ROE13%程度を目標として掲げている。長年培った業務知見と技術力、深い顧客関係を基盤とする高い参入障壁を強みに、価格主導力と効率的なサービス提供体制を両立しながら、持続的な収益成長を目指している。
市場環境は、国内IT・DX需要総じて堅調で、生成AI、クラウド、セキュリティ、ネットワーク更改、製造業の基幹刷新・サプライチェーン強靭化等の案件が継続。同社は「業界横断の社会課題をITで解く主体」への進化を掲げ、プロダクト化・標準化による生産性向上とスケール化にドライブをかける。人材制約下でも価値提供速度を落とさないためのビジネスモデル転換が、中計のコア施策である。なお、為替・金利・地政学による不確実性は残るが、同社の手元受注は高水準で、短期の需給変動への耐性は高まっている。
「NSSOL 2030」では長期的な方針として「パートナーからプロデューサーへ」を掲げ、「多様な価値提供方法の実現」を推進する。従来型SIから脱却し、TAM型と呼ばれる3つの新モデルへ移行する。T型は生成AIなどを活用し顧客目的に沿った最適システムを構築する次世代SI、A型は蓄積知見をアセット化などによるFit to Standardの迅速導入、M型はT型・A型の資産を業界横断で展開し、サプライチェーン基盤整備などを官公庁・企業と共創するモデルである。また、M&Aも成長戦略の一環とし、プロダクト・人材・顧客基盤の補完による非連続成長を目指す。
総じて、同社は「案件質の改善(付加価値プライシング)×アセット型拡大×顧客深耕」の三位一体により、売上総利益率の改善と収益成長の両立を続けている。短期の数値は金融の反動や販管費増で振れるが、実力ベースの増益は維持。中計でのアセット化25%目標、産業・鉄鋼/コンサル・デジタルの牽引により、FY26の増収・二桁近い増益計画に期待が高まる。 <FA>

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