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松屋アールアンドディ:縫製自動化のパイオニア、医療・自動車領域で成長が続く高収益モデルに注目

2025年06月09日 09:14 銘柄/投資戦略

*09:14JST 松屋アールアンドディ:縫製自動化のパイオニア、医療・自動車領域で成長が続く高収益モデルに注目 松屋アールアンドディ<7317>は、縫製自動機の製造・開発・販売と血圧計腕帯やカーシート、エアバッグなどの受託生産を展開する企業である。縫製自動機の高い技術力とベトナム拠点の活用により高品質な製品の安定供給を実現し、成長市場で独自の競争優位を築いている。

同社の事業は、メディカルヘルスケア事業、セイフティシステム事業、その他事業の3つのセグメントで構成されている。メディカルヘルスケア事業では、主にオムロングループ向けの血圧計腕帯の製造・販売を行っており、オムロンの量販店向け血圧計腕帯では約9割のシェアを占める。セイフティシステム事業では、自動車関連メーカー向けにカーシート、エアバッグ、自動車内装品等の製造・販売、さらに自動車の安全装置(エアバッグ・シートベルト)に関する縫製自動機の開発・製造・販売を行っている。その他事業は、メディカルヘルスケアおよび自動車関連メーカー以外の顧客からの依頼に応じ、家具、インテリア、アパレル関係などを中心に、それぞれのニーズに合った縫製自動機の開発・製造・販売を行っている。

縫製工程の自動化に関する高い技術力と、それを基盤とした独自のビジネスモデルが同社の強みだ。創業以来培ってきた縫製自動機の開発・製造技術と様々な特許は、血圧計用腕帯やカーシート、エアバッグの製造に応用され、品質の安定と自動化を実現している。また、同社は縫製自動機の製造・開発・販売と、自社の自動機を使った受託生産の両方を手掛ける独自のビジネスモデルを展開しており、他に類のないシナジー効果を享受している。また、日本では縫製工の高齢化が進みサプライヤーが減少しており、ベトナムに十分な生産キャパシティを持つ工場を持ち、安定した生産・供給ができる点も同社の優位性となっている。

2025年3月期決算は、売上高9,567百万円(前期比13.4%増)、営業利益1,953百万円(同52.2%増)、経常利益2,054百万円(同57.2%増)、純利益1,560百万円(同63.7%増)と、業績は大幅な増収増益となった。主力のメディカルヘルスケア事業では、血圧計腕帯が円安効果、高単価製品の構成比上昇が増収に寄与、売上高は6,059百万円(同12.7%増)、セグメント利益は1,987百万円(同42.7%増)と2ケタの増収増益を達成。セイフティシステム事業も、カーシートの新規取引や縫製自動機の南米・欧州向け販売拡大などが奏功し、売上高は3,378百万円(同12.1%増)、セグメント利益は253百万円(同51.2%増)と同様に2ケタの増収増益となった。ベトナム新工場のコストダウン効果や工程自動化の推進も、収益を押し上げた重要な要因である。2026年3月期は、為替の円高進行や地政学リスクの影響を見込みつつも、血圧計腕帯や医療機器の販売、縫製自動機の海外展開強化などにより、売上高9,600百万円(同0.3%増)、営業利益2,000百万円(同2.4%増)、経常利益2,080百万円(同1.2%増)、純利益1,603百万円(同2.7%増)を計画している。

同社は、ベトナムを中心とした生産基盤の高度化、次世代縫製自動機の開発、さらに新規事業への進出を通じて、中長期的な成長を目指している。主力のメディカルヘルスケア事業では、血圧計腕帯の生産効率向上やサプライチェーンの見直しを進めるほか、リハビリロボット事業の強化やウェアラブル機器分野への進出に取り組んでいる。セイフティシステム事業では、カーシート・エアバッグ事業の取引の拡大や、縫製自動機の欧州や南米での受注拡大を推進する一方、将来の開発・実用化を目指しドローン用エアバッグの特許を米国で取得した。また、ベトナム新工場では、太陽光発電導入による脱炭素経営にも取り組み、生産コストの抑制と環境対応の両立を進めている。

株主還元では、2025年3月期の配当は1株あたり10円となり、前期の2.5円から大幅な増配となった。配当性向も5.6%から13.6%へと上昇しており、株主還元の水準は着実に引き上げられている。今後の配当方針として、まずは配当性向20%の達成を目標として掲げており、業績や事業環境を踏まえたうえで段階的な増配が実現されていくであろう。メディカルヘルスケア事業では、血圧計市場が新興国の生活習慣病増加や高齢化を背景に、年率約5%の成長が見込まれている。セイフティシステム事業では、エアバッグの新興国への普及が進んでおり、インドや南米などを中心に市場拡大が期待される。縫製自動機市場においても、品質向上や省人化の観点から自動化ニーズは今後さらに高まっていくだろう。今後、世界規模で拡大が続く市場において、縫製自動化の高い技術力と独自のビジネスモデルを強みとして、ユニークなポジションを確保している同社の今後の展開には注目しておきたい。

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