ステップ Research Memo(7):横浜・川崎地区の中学生部門の生徒数シェア15%を目標に着実な増収増益を目指す
*11:27JST ステップ Research Memo(7):横浜・川崎地区の中学生部門の生徒数シェア15%を目標に着実な増収増益を目指す
■今後の見通し
2. 今後の成長戦略
(1) 小中学生部門
ステップ<9795>は中長期的に神奈川県内に特化した学習塾として成長を続けるための戦略として、生徒数の増加が見込まれる横浜・川崎エリアでのシェア拡大を最重要課題として取り組んできた。2023年春の横浜市内の公立トップ校における合格者数は他塾との差をさらに広げる結果となり、県内最難関校とされる横浜翠嵐高校の合格者数についても2年ぶりにトップに返り咲いたことで、横浜エリアでのブランド力は一段と高まったと評価できる。同社の場合、志望校の選定は生徒の自主性に任せているため、横浜翠嵐高校の合格者数が急に増加するということは考えにくいが、横浜・川崎エリアの生徒数を今後も増やす方針であることから、トップの座を維持する可能性が高いと弊社では見ている。
神奈川県内の公立中学校に通う生徒数に占める「STEP」生の占める比率は2023年10月時点で11.0%となっており、このうち、横浜・川崎以外の地域では14.5%、横浜市で9.2%、川崎市で5.0%である。一方、2030年までの人口予測によれば横浜市の北部エリアと川崎市は増加傾向にあるが、県西部エリアでは減少傾向が続く見通しとなっており、横浜・川崎エリアでシェアを拡大する戦略は理に適っていると言える。
同社は当面の目標として、横浜・川崎エリアでの中学生部門の生徒数シェアを15%程度まで引き上げることを目指し、これらエリアで年間3~4校のペースで新規開校を進める計画だ。川崎エリアでは15スクール前後、横浜エリアでは25スクール前後を開校すれば15%のシェア達成が可能と見ており、今後10年程度かけて展開することになる※。生徒数で換算すれば、全体の公立中学校生徒数並びに他の地域のステップ生徒数が横ばいで推移したと仮定した場合、横浜・川崎エリアのシェア拡大で現在の1.34倍まで生徒数を拡大することが可能となる。10年かけて達成したとすると、生徒数の増加ペースは年率3%となる。主要都市部の生徒数シェアを見ると、本社を置く藤沢市で26.0%となっているほか鎌倉市で22.7%、海老名市で19.9%と15%を上回る地域もあることを考えると、長期的には横浜・川崎エリアでも15%を上回るシェアを獲得する可能性は十分にあると弊社では見ている。実際、横浜市の青葉区と都筑区では16%台までシェアを伸ばしている。スクール展開のペースに関しては、教師の育成と条件に適う不動産物件が出てくるかがカギを握る。このうち不動産物件の探索に関しては、競合塾が撤退したり金融機関が営業拠点の統廃合を進めている状況から、以前と比べると見つけやすい市場環境になっているようだ。
※スクール当たりの中学生生徒数150人を前提として計算。
(2) 高校生部門
高校生部門では、従来3~4年に1校のペースで開校を続けてきた。授業の質を維持しながらスクールを増やす方針のため、新規開校は教師のリソースを確保してからとなる。こうした取り組みを続けてきた結果、大学合格実績もここ数年で躍進的に伸び、神奈川県内の公立高校生を主体とした学習塾としてはトップレベルのブランド力を有するまでになった。校舎によっては定員に達して募集を打ち切りところも増えている。このため、喫緊の課題は既存校舎の移転・増床や、新規校舎の開設を進めることにある。前述したように不動産物件に関しては、以前よりも見つけやすい環境になっていることから、需要が旺盛な地域での移転・増床や新規開校により中長期的に生徒数を拡大することが予想される。
(3) 学童保育部門
「STEPキッズ」は、前述のとおり2023年春に開校した白楽教室の収益化の目途が立てば、県内全域へと展開する予定だ。弊社では、同社が知的好奇心を育む豊富なプログラム(15種類)を差別化戦略として市場を開拓する可能性は十分あると見ている。あとはそれを支える人材育成と組織体制の構築が成長のカギを握ることになる。学童保育に必要とされる人材は学習塾の教師とは異なる部分も多く、子どもの可能性や潜在能力を上手く引き出す力が求められる。同社は「STEP」の女性講師で結婚後に育児休職から復帰する人材など、学童保育部門の適性に合った人材を育成する研修カリキュラムを作り、こうしたリソースを拡充する考えだ。
教室展開については、近隣に小中学生部門のスクールがある地域に開校する戦略である。学習プログラムに応じてSTEPスクールの教師や教師経験者がサポートに入るなど、効率的な運営が可能となるほか、マーケティング面においても既にSTEPのブランドが確立している地域に開設する方が広告宣伝費も少なくて済み効率的なためだ。生徒1人当たりの売上単価は約50万円、1教室当たりの定員数は120名前後を目安に3~4年で収益化するビジネスモデルで展開する。学童保育部門が本格的に加わることで、対象学年が小学1年生~高校3年生と学年数で見れば従来の1.5倍に拡大することになり、顧客生涯価値(Life Time Value:LTV)の向上によって収益基盤がさらに強固なものとなって成長ポテンシャルも高まる。今後年間70人ペースで生徒が増加した場合、年間売上高は35百万円増、利益率を20%とすれば営業利益は7百万円増のペースで拡大することになる。もちろん品質の高いサービスを提供する運営体制が構築できれば、複数教室を展開し成長スピードを加速することも十分可能と考えられる。
(4) 運営方針と生徒募集活動、価格政策について
同社は今後も校舎数に関しては必要以上のペースで拡大せず、「何よりも授業の質を大切にする」という基本方針を徹底させ、堅実な成長を目指す方針である。また授業形態としては今後も対面型の集団ライブ授業を基本にサービス提供を行い、必要に応じてオンライン授業を併用する方針としている。オンライン授業では生徒が「理解する」授業は提供できても、「できるようになる」ところまで持っていくのはハードルが高いと考えているためで、今後も対面型のライブ授業を強みとして展開する方針である。
生徒募集活動については従来、生徒や保護者からの口コミとともに新聞折込チラシも活用してきたが、ここ最近は顧客層となる世帯で新聞購読率が大幅に低下していることもあり、チラシ広告からインターネットをメインとした募集活動に移行している段階にある。教室ごとのホームページを充実させ、Webでの問い合わせや説明会募集などに対応している。今後もICTを積極的に活用しながら、長期的なスタンスで生徒募集・校舎運営の体制づくりを行っていく。
なお、授業料に関しては2024年度も据え置く方針を決定した。「高品質の授業とシステム」を「安売りせず」に提供する方針には変わりないものの、市場環境の変化にも対応していく必要があるとも考えており、今後は様々な角度から検討する考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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